れでぃ×ばと!〈11〉

stars ……そう、やれる。足りない分は努力して、それで駄目でも諦めずに自分に出来る最高の結果を目指して、ここまでやってきた。だから今回も、同じように。乗り越える山が、ちょっと進み方が難しいというだけだ。やってやれないことはないはず。あれこれと頭を抱えてうじうじするのはベストを尽くす努力をしてからにしよう。

徒姉妹である棗のプレゼントを買うため、ショッピングにやってきた秋晴。自分では良いアイディアが浮かばないため、ご意見番として朋美とセルニアにもついてきてもらったのですが…いつのまにやら、「棗に似合うものはどれ?」という“れでぃー”二人の下着勝負になってしまい…!?そして当然のように審査員は秋晴で…。そんな受難の彼が選んだ結論とは!?さらにさらに、四季鏡姉妹の姉・沙織とのグアム旅行&エロマッサージイベントや、中東お嬢様・アイシェにナ・イ・ショで贈る秋晴とヘディエの秘め事プレイなど、今回も“れでぃー”たちの魅力をたっぷりでお届けする最新巻登場ですっ。

[tegaki font="crbouquet.ttf" color="Fuchsia" strokesize1="4″ strokesize2="4″ strokecolor2="Violet"]気付いてしまったほんとのキモチ[/tegaki]

物語は前巻にてようやくセルニアが自分の気持ちの意味に気付いて、これから少しずつお互いの関係が変わっていくかと思ったら、そうは問屋が卸さない。

現状の流れではメインヒロインの座は完全に奪われてしまった感のある、腹黒幼なじみもだまっちゃいられません。

従姉妹へのプレゼントに、ほかの女の子を――よりにもよって自分を少なからず好いている娘を、ふたりもっ!――連れ回してショッピングという、ある種、鬼のような仕打ちをしたかと思ったら、お返しとばかりに朋美とセルニアに連れ回されて入ったランジェリーショップでの羞恥プレーで心をえぐられる秋晴の姿にざまーみろ(笑)  いや、実際そこでの嬉し恥ずかしなイベントは、どう考えても美味しさが遙かに上回っているだろうに、当の主人公がそれになかなか思いが至らない辺り、10巻以上も冊数を重ねていながら、進歩がないのはタイヘン残念ですね。

そして、そんな秋晴の振り回されっぷりとは別に、静かに進行するふたりの乙女の恋ごころ。自分の気持ちを自覚しながらも、対外的にはそんなに雰囲気の変わっていないはずのセルニアの、けれど些細な変化に気付く朋美も、ようやく自分がどれだけ危機的な状況に置かれているかに気がつきましたね。好きだとか嫌いだとか、そんな感情に自分たちを当てはめようとせずに、過去の幼なじみだったという関係に安住しようとしていた彼女も、いい加減、自分の気持ちを無視できない段階に来てしまったよう。好きだという、そんな一言をうっかり訊こうとしてしまい、後になって転げ回るくらいに後悔してしまう彼女の姿は珍しくて、だからこそ、彼女の気持ちをそこまでかき回している男の子と女の子がいるという現状に、朋美も悠長に様子見してはいられないということなんでしょうね。

気持ちを切り替え、自分らしく、これまでがそうであったように、これからも自分らしく、恋の戦いに向かおうとする朋美。はてさて、今の段階では、秋晴の気持ちがどちらに向いているかは判然としませんが、雰囲気的にはセルニア寄りな気がしますね。そこからどうやってお互いの気持ちをアピールしていくのか、こういうことに関してはてんで不器用そうな朋美の奮闘を生暖かく見守りたいところ。

一方の秋晴も、最後の短編では、アイシェとヘディエとの会話で、自分でさえ思い至らなかったことを指摘され動揺。誰も彼も等しく友人関係を気づけていながらも、そこから一歩を踏み出そうとしなかった秋晴の心を揺さぶった言葉。それが彼に何を意識させるのか、そうして自分の内面と向かい合ったときに浮かんでくるのが誰の姿なのか、茫洋としてイメージはまだ形を結ばず、けれど、その心の中には、すでに誰かが住んでいるような、そんな言葉でしたね。

遅々として進まないお話も、そろそろテンポアップして欲しいところです。

hReview by ゆーいち , 2010/04/12

れでぃ×ばと!〈11〉

れでぃ×ばと!〈11〉 (電撃文庫)
上月 司
アスキーメディアワークス 2010-03