新生徒会の一存―碧陽学園新生徒会議事録 下

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stars おいおい、だからって俺をあんたみたいな小物と一緒にしてんじゃねえよ、クソ野郎が。

新生徒会の一存―碧陽学園新生徒会議事録 下 書影大

ようこそ、私立碧陽学園生徒会室へ! 美少女役員四人+おまけ一人、生徒諸君のため、青春を謳歌しております!!
未だ生徒会室に来ない美少女新役員二人の説得に奔走する我らが主人公、杉崎鍵を襲うかつてない危機。
「ね、アンタ。明日、アタシとデートしなさいよ」
「お父さんと一緒に、食事してほしいなぁって。カレシとして」
自称、ハーレム王(笑)にシリーズ初のモテ期到来!?
「愛する杉崎さんの顔がどうしても見たくなりまして」攻略不可能キャラかと思われた風見めいくまでも巻き込み、ついにハーレムルートへ――。いけるといいよねっ!

そしてハーレムエンドへ……!?

ついにその正体を明かした、新生徒会における杉崎最大最強の難敵・火神北斗。あ、もう一人の日守東子さん? ああ、うん、典型的なテンプレ通りのツンデレって一周して可愛いよね。クールビューティに見えてその実いろいろ残念すぎるところとか、情に深い優しいいい娘な所とかもうさいこー(棒

まぁ、前半は日守さんの攻略ルートだったんですが、それはあくまで前哨戦。このエピソードの全ては、杉崎のこれまでとこれからを問う、彼にとって思想の対極にある天敵、決して相容れない水と油な存在である火神との物語のためにあったと言っても過言ではないのかもしれません。

ハーレムを築き、等しく愛を注ぎ誰も彼もを幸せにする。かつて、彼は幼なじみに問われたときにぶれも迷いも捨てそう断言するまでに至りました。けれど、彼にとってはその言葉を発することができたのは、彼が今までであってきた少女たち、愛を注ごうとした少女たちが、彼の思想に若干引きつつも、それ以上に彼に引かれていたからに他ならなかったという事実を最悪の方法で知らされます。彼がいつかそうなってしまうかもしれない、理想とはほど遠い、けれど、その思想は極めて似通っている吐き気を催すような人物との対面。そして、その男によって、事実、少女の幸せが完膚なきまでに踏みにじられてしまっているという現実。それを突き付けられ、否定することもできず、そして一方的に彼の思想など害悪でしかないと決して認めることなどできないと明確な憎悪を火神に向けられ、彼のこれまでの在り様に根底からNoを突き付けられてしまう展開。

いやあ、これは痛い。けれど、彼がかつて飛鳥にそう言ったときは甘いと思ったりしたものですが、それを作品世界内で指摘する人物を登場させるとは、容赦ない展開で逆にほれぼれします。このシリーズ、番外編の方ではそうだったけれど、シリアス展開の具合が絶妙で痛気持ちいいんですよねえ。その後にハッピーエンドを見せてくれるという期待が裏切られないのがほぼ分かっている安心感もあるのですが、それ以上にどん底からの逆転ホームランな大団円が気持ち良すぎてもうね。基本、善人しか出てこない作品でしたが、最後の最後でゲスい人物を、杉崎の分身的な扱いで登場させ、けれど彼がそんな低俗なレベルでとどまらない高い意志を持ち続けるという、彼自身の決意表明で上回ってみせるという構図が素晴らしいのですよ。ここぞというところで格好いい姿を見せる主人公ですが、ここまで自身の尊厳を踏みにじられ、否定されても、それでも伸ばす手を引っ込めない、その覚悟に僕は敬意を表するッ! いやいや、彼のハーレムメンバーを幸せにするためにはその周囲も全て含めて幸せにしてみせるという覚悟の形、しかと受け取りましたよ。その限界にぶち当たったときにどうするか、その答えの一端も見えました。一人ではできないことでも、彼が繋いできた絆がそこにある、ならば、ここから生まれる未来もきっとあるのだろうと、そんな生暖かい未来予想図を描いてもいいじゃない、そんなお話ですね。

かつてない激しい激突の果てにようやく始動開始した新生徒会。なんか火神がクラスチェンジして怨敵からヤンデレ化してさらに厄介な感じになってて引きつった笑いが浮かびますが、可愛いからよしっ! 他のメンバーとの交流を深めるのにも命がけな、毎日が修羅場の生徒会活動はいったいどこへ向かうのか!? まとめ役が不在な生徒会の手に負えなさは旧メンバー以上で、このくせ者揃いのメンバーたちと、杉崎は一年、五体満足に過ごすことが果たしてできるのか……?(笑)

まぁ、そんな日常が戻ってきた後のワンモアサービス。前会長・桜野くりむの再登場はサプライズでしたね。考えてみれば上巻では登場場面があったかなかったか印象に残ってないくらいに影が薄かった彼女ですが、今回はいい役回りですね。どれだけおバカキャラ扱いされようとも、卒業式での言葉とか、ここぞという所では心に残るいい台詞をしゃべってくれる本作の代名詞ともいえるキャラ。苦労に苦労を重ね、それでも日常を、世界を面白いと笑える杉崎を「貴方が面白い人間になれた」からと全肯定してくれる彼女はどこか大人びて、今巻の最後の挿絵を飾るのに相応しいシーンでらしくない微笑みを見せてくれて不覚にもぐっときたのは私だけではないはずです。彼女もまた、新しい生活の中、少しずつ変わっていく。毎日を笑い、楽しみ、あるいは悲しみ、悩み苦しんでも、それでも過ごす日々を面白いと感じている。そんな彼女の在り様が伝わってくるような一時でしたね。お子ちゃまなイメージから、少しだけ色恋を感じさせるやりとりもあったりと、その先の妄想も楽しげな感じですが、この学園の生徒会を通じてつながった皆に幸あれ!

思えば遠くへきたものです。ギャグがマンネリだとかそんな不満もあったりしましたが、ストーリーものとしてこういう決着点を見せてくれるというのは本当に予想外で嬉しい展開でした。作者の出世作となったシリーズではありますが、こういう短編ギャグだけでなく、長編としても勝負をしていくことができる力量を見せてくれて、これから展開していく新シリーズも期待が持てそうです。

本シリーズもまだ1冊展開が残っている……え、まだ続きあるの? ですが、そこでは新旧生徒会の顔合わせとか想像するだけでもカオスなエピソードも収録されるということなのでちょー楽しみですよ。ヤンデレ火神を、そのダークサイドからすくい上げることができるのか。そうしないと、修羅場が文字通り修羅場でデンジャラスよ逃げてー!?

hReview by ゆーいち , 2013/03/24

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