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三雲岳斗 Tag Archive
アスラクライン〈13〉 さくらさくら
だけど、それじゃ駄目なんだ。僕一人の力じゃ今までだってなにもできなかった。操緒や嵩月、朱浬さんやアニア、樋口や杏、それに佐伯会長たち――部長もだ。みんながいたから、なんとかやってこれたんだ。だから、“神”だってきっと倒せる。僕にはなんの力もないけど、それでも誰も犠牲にしないで世界を救う方法を絶対にあるはずだから――。
新たな
科學部の部長でもあり、“神”打倒という目的は同じながらも、まったく異なる手段でもってそれを成そうとする炫塔貴也は、智春が抱いたような世界に生きるひとびとへの想いよりも、自らの願いへと天秤を傾け、そのために孤独で、他者からはただただ憎しみを向けられるような戦いを選択しました。結果として、彼は戦いに敗れ、その目的は智春へと譲らざるを得なくなるのですが、単体の戦力においては智春たちを優にしのぐはずの彼が、そんな敗北を喫しなければならなかった理由は、作中にも描かれ、智春自身が語っているように、自分だけで戦おうとしたからだったんでしょうね。悪魔の力と機巧魔神の力の両方を備えた魔神相剋者といえども、たった一人で世界を救おうなんていうのは傲慢。大事の前の小事としてあらゆるものを犠牲にし世界をやりなおすことで目的を達しようとした彼と、今ある世界を救い皆を救ってなお目的を達することを選んだ智春。覚悟の違いというか、ふたりの想いの向け方が、そのまま両者に力を貸すひとびとの戦いに直結していたような流れでしたね。
物語のクライマックスらしく、これまでの登場人物各個に見せ場を持たせつつ、定められた結末へとまっすぐに進んでいったような印象。ただ、見せ場を派手に描くことなく、それぞれが自らに定めた役割を淡々とこなすような各シーンは、やや駆け足気味な印象を覚えたりしました。対立していた塔貴也との戦いもあっさりした決着を見たし、ラスボスの“神”に至っては思った以上にあっけなく退場したような。あの巨大な存在を、あれだけで退けられたというのは少々疑問が残るのですが、それはまた別の語られ方をしたりするのかな。
エピローグもそれを汲んでか説明不足なのか意図的なのか、謎を抱えたまま完結したような感じが。智春の妹の和葉が、鳴桜邸へとやってくるという、役者を変えてまた1巻に戻るような流れ。彼女の前に現れた奏が手渡すトランクの中身が何なのかも気になりますが、そもそも智春たちのあの後が不明なのでもやもやする思いです。
奏が残され、智春と操緒がともに行方知れずというのは、奏にとっては皮肉な結末にも思えますね。せっかく結ばれたのに、その想いは未だ宙ぶらりん、逆に操緒の方は、かつてその身を捧げ智春の命を救い、そして今度はともに世界を救った。そして、最後の戦いの直前に彼の心に浮かんだ世界を救う以上に大切な操緒を救うという目的。それが結局叶ったのか叶わなかったのか、この奇妙な形になってしまった3人の関係の行方とともに気になることこの上ないですね。
救われ続いていくこの世界では、きっとまた様々な物語が紡がれていくのでしょう。そんな中に、彼らが幸せを得られたという、そんな片鱗でも感じられるような暖かなエピソードを、また読むことができるなら、うれしいですよね。
hReview by ゆーいち , 2009/11/22
- アスラクライン 13 (電撃文庫 み 3-28)
- 三雲 岳斗
- アスキー・メディアワークス 2009-11-10

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ダンタリアンの書架〈3〉
禁忌の知識を書き記した幻書はこの世に在らざるべき存在だ。幻書を見守る読姫と、鍵守も。それら全てを焼き尽くすために焚書官は存在する。
いつになく荒れるダリアンの理由は、読み終えたばかりの流行小説の最終刊となるはずの第3巻が存在しないがゆえだった。作者の死亡により物語の結末を見ることは叶わない。しかし、そんなヒューイの元に、件の作者、レニー・レンツから助力を求める手紙が届いて……。そして、幻書にまつわる物語は、鍵守と読姫を焚書官へと巡り合わせる。
ダリアンがどんどんと幼年化していっているような!? いや、かわいいんですけどね。
今回はかなり軽いテイストのお話が含まれていたりして、重苦しい印象はどこかへ飛んでしまったかのような。いや、最初のエピソード「換魂の書」のお話とかは行き過ぎたファンの憧れの暴走とかミザリーさながらのホラーですが、業の行く先が割とお約束だったのでそんなに救いがないわけでもないのかなあとか。
他には「魔術師の娘」のオチに思い切り脱力したり。いや、こういう報われなさは、ある意味男としての落涙を禁じ得ないものが……。そうだよね……そういう展開だってあるよね。それまで必至に戦ってきた男たちの情熱の行き先はどこーー!?
そして、意味深な登場をしつつも前巻では存在を忘れられていたかのような扱いの焚書官がついにヒューイたちと遭遇。やたらとシリアスな過去を背負っていて並々ならぬ憎しみをふたりに向けてくる焚書官・ハルだけれど、その対決の行方はなんともはや。お互いの抱えている使命の方向性が見事に交わっていないせいかのあしらわれ方ですが、ここだけみると、どこか抜けた部分があるような愛嬌も感じてしまいますね。
雪辱に燃えるハルが再びヒューイたちに相まみえる日はやってくるのでしょうか? その時は問答無用な対決に発展しそうですが、はてさて……。
hReview by ゆーいち , 2009/05/09
- ダンタリアンの書架3 (角川スニーカー文庫)
- 三雲 岳斗
- 角川グループパブリッシング 2009-05-01
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アスラクライン〈12〉世界崩壊カウントダウン
私はあなたに強制しない。水無神操緒を救って、この世界とともに滅ぶか、それとも彼女を犠牲にして、“二巡目の世界”に戻るか。決めるのはきみよ、夏目智春。
“一巡目の世界”へ飛ばされてしまった智春は、元いた世界への帰還の方法も分からぬまま、このもう一つの世界でもうひとりの知人たちに出会う。姿の見えない操緒、様子がおかしい奏、そして滅び行く世界の姿を目の当たりにした智春は、何もできないままの自分に歯がみする。意外な人物によって告げられる世界崩壊の真実を知ったとき、智春は決断の時を迎える。
重い展開が続きます。崩壊を間近に控えた世界は、そこに暮らすひとびとの目には映ることなく、だからこそ静かに訪れる世界の終わりというものに言いようのない恐れを覚えます。
そんな世界で、確かに生きている智春の友人たち。滅ぶことが確定し、彼らを見捨てて“二巡目の世界”帰還することが、未来を作る方法だと信じていた彼に告げられる世界崩壊の原因と正体は、スケールが大きくてポカーンとなりますね。いや、ついにラスボスめいた「何か」の姿が明かされ、世界を救うための方法も見えてきたのですが、そう上手くいくとは思えないのがこのお話。
そして、窮地において残酷な選択を迫られ、それでも選ぶことのできない二択問題に、さらなる選択肢を増やしてくれた奏の献身と愛情は、あまりに痛々しくて。帰還後に彼女を救うなにがしかの方法が残されていることは語られていますが、操緒を救うのと同様、それはすべての問題に片が付かない限り簡単には叶えられそうもないですね。
新たな力を得、新たな決意と覚悟を持って自分の世界へと帰って行く智春。“一巡目の世界”を見捨てることなく、続く世界で最良の結果を出すことで、この世界さえも救おうと決めた智春の心は、彼だけでなく、彼を支え、導いて、踏み出す勇気を与えてくれた皆の力に満ちているように思います。
hReview by ゆーいち , 2009/04/12
- アスラクライン〈12〉世界崩壊カウントダウン (電撃文庫)
- 三雲 岳斗
- アスキーメディアワークス 2009-04-10
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ダンタリアンの書架〈2〉
当然の報いなのです。あいつらは、私のお気に入りに傷を付けたのですから。
知るべきでない知識を収めた幻書。それを封印するための書架であるダリアンと、書架の管理人の任を受け継いだヒューイは、世にある不可思議な噂を聞きつけ、あるいは幻書を求める者の招きに応じ、旅をする。幻書が人間を狂わせるのか、人間が自らの業ゆえに滅ぶのか、それはその手に在る本だけが知っている。
ということで、ヒューイとダリアンの幻書を追う短編集の第2弾。なんか、前巻の最後に出ていた焚書官のふたりが出てこなかったんですが……。逆に、ヒューイたちと対を成すようなラジエルらが出てきて幻書を巡る人知れない争いは静かに激化していっているのかな。
時系列的にはヒューイが軍属だった頃にラジエルたちが暗躍していたようだけれど、彼らが物語の現時点でどういう行動を取っているのかも気になりますね。出番のなかった焚書官たちも含めて、出会ったら血を見ること間違いなしな気がしますが……。
お話的には、救いがあったりなかったり、和んだり和まなかったりと、振れ幅が大きい短編が揃ってますね。一服の清涼剤的なカミラ嬢のエピソードとかは、彼女の人となりや、ダリアンの愛らしさとかが前面に出ていて良かったですねえ。
そんなダリアンも、可愛らしいところや、別の女に目を奪われるヒューイにちょっとした嫉妬心を見せたりと、少しずつ人間ぽい感情を見せてきてるような。幻書に関わる人間の末路を達観したような老成したような視点と口調で切ってみせるのと同時に、そこに哀れみと一縷の救いを願っているような様子もあり、書架の役目を担った道具であるよりも、ひとりの少女としての魅力をだんだんと発揮しているように思えますね。
一方のヒューイも、かつての戦争で、それこそ人生観そのものを変えられたような壮絶な人生を送っていたり。そんな彼が、今、こうしてダリアンと、楽しげに旅をしている、それもまた運命のいたずらか何なのか、僥倖なことですね。
そして、ダリアンの正統なるふたりめの鍵守であると言われたヒューイ。前任であるひとりめの「彼女」とやらも、今後物語に何らかの関わりを持ってくるのでしょうか?
hReview by ゆーいち , 2009/01/11
- ダンタリアンの書架2 (角川スニーカー文庫)
- 三雲 岳斗
- 角川グループパブリッシング 2009-01-01
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ダンタリアンの書架
けれど、ひとつだけ、決して忘れないように。世界には、知るべきでないことがあるということを――。
青年は少女を連れて旅をしている。青年の名はヒューイ、少女の名はダリアン。胸に大きな錠前をぶら下げた彼女こそが、呪われ、失われた禁断の書物・“幻書”を納めたダンタリアンの書架への扉。そして、ヒューイの手にはその扉を開く鍵が握られていた。
幻書とそれを納めた図書館・ダンタリアンの書架。それの管理人であるダリアンと、書架を祖父から受け継いだヒューイの旅のお話。幻書によって与えられる人智を越えた力を得、それによって人生を狂わされたり、あるいは幸せを掴んだりと様々な結末を描いた短編集です。
この手のアイテムを手に入れたことで、その力に溺れ、振り回され、不幸な結末になるのは良くある話で、本作もダークな結末で締められる「美食礼賛」という短編からスタートするわけですが、良い雰囲気ですね。個人的にはもっと救われない話が多くてもいいかなとも思います。人間を不幸にする書架を帯同し、さらには力を与えるために幻書を貸与する、そんなヒューイとダリアンの行為こそが、悪であるとして動く焚書官のエピソードが最後で語られているだけに、両サイドから見たときに明確に善悪が反転しているだけに、ふたりが焚書官という存在を知ったとき――あるいはすでにその存在を知っているのかもしれませんが――どのような対立・対決になるのかも気になるところ。
断章で語られたふたつのエピソードは、誰の手によって幻書が持ち主に渡されたのか分からないままなのが謎めいていますね。ダリアン以外にも、幻書を管理する存在があるのか、幻書を使って何か思惑を持って動いているのか、そして焚書官の最終的な目的など、これから語られるべき物語には事欠かないようにも思います。
メインは幻書によって引き起こされる事件をヒューイたちが解決していく、その軸にさまざまな要素が絡んできて一本の物語を作っていくのかな、とそんな風に思います。
hReview by ゆーいち , 2008/11/16
- ダンタリアンの書架1 (角川スニーカー文庫 123-21)
- 三雲 岳斗
- 角川グループパブリッシング 2008-11-01
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