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ナインの契約書〈3〉―Sympathy for the devil
見せてあげる。そして思い知りなさい。あんたの救ってきた人間の醜さってやつを。
第1巻の救いのない物語を連作した形式からずいぶんと雰囲気変わって、最後は長編で落ち着きましたね。この辺の作風の変化を無理矢理に納得するとなると、九の人間に対する距離感の縮まり*1と、ささやかな希望の現れなのかなあとか。
まぁ、一二三の登場の時点で、九との対立構造が生まれてしまい、物語としてはふたりの対決と決着を持って完結するというのは正しいと思いますが、初期の割とダークな展開に惹かれる部分があっただけに、今回のデス・ゲームな展開は逆にありきたりに感じてしまったかなあ。別作品だけれど土橋作品とかはそっち方面を突き詰めていったりしてるわけで、そういう点では既視感がありました。
むしろ、極限状態に置かれ互いに不信を募らせ会う人間たちの様子を見ながらも、淡々と、本音を見せずに目的達成のためにゲームに挑む九と、囚われながらも彼女を助けようと四苦八苦する一やあまりあといった、悪魔サイドの描かれ方に注目すべきでしょうか。相変わらず雑学をとめどなく垂れ流しつつ機転を利かす一や沸々と怒りをため込むあまりあの対照的な様子と、九を救おうとする共通した想いとか。
そして、決して相容れない思想を持つ九と一二三の決着は冷徹で、冒頭でふたりが契約した通り、敗者は問答無用で地獄行きなわけですが。けれど、そんな状況にあってさえらしさを失わない一二三はさすがというか。ライバルキャラとしては、これまではいまいち印象に残らないような微妙な嫌がらせをしてきた彼女ですが、こんな最後を見ると考えを改めたくなりましたね。
エピローグでは相変わらずな掛け合いで締めてくれましたが、欲を言えばこういった九と一のやりとりを本巻中でもっと見せてほしかったかな。
hReview by ゆーいち , 2009/07/05
- ナインの契約書〈3〉―Sympathy for the devil (MF文庫J)
- 二階堂 紘嗣
- メディアファクトリー 2009-05
- Amazon | bk1
- や、もともと救いがたい人間をずっと見てきてるわけだから、むしろ九のそれでも人間を救いたいという想いに対する読者側の理解の深度が増していくにつれて、といった方が正しいのかも? [↩]
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ナインの契約書〈2〉 The first day of last days
人間なんて救うに値しない、愚かな生き物だということを、あの人間に媚を売るだけのニセ悪魔に、よぉく理解させなきゃ。
人間と契約し望みを叶える代償に魂を得る。悪魔である
前巻にあったようなダークさは少し薄め?
そして、九という悪魔の、人間に対する接し方がだんだんと明確になってきてますね。どうでも良いという態度を滲ませつつも、契約によってもたらされる不幸と、得られる幸福を天秤にかけさせ、そのどちらかを選択させる、最後の背中の一押しをさせているように思います。
そんな九の行動は、やはり異端であるようで、彼女人間びいきを快く思わない悪魔・一二三の登場で、この物語は悪魔の契約によってもたらされる人間たちの行く末を見守るお話から、九と一二三の人間を媒介にしたある種の闘争の様相を呈してきているように感じられます。
良くある悪魔のイメージと、その極悪非道さからすると、一二三の方がよほど正統に悪魔っぽいんですが、逆に九がこういう迂遠な方法を採ってでも、人間を結果的に救う方向へ歩ませているのか、そちらも気になってくるところではありますね。良くあるパターンだと彼女の出自に秘密があったりするんでしょうけれど、はてさて……?
ともあれ、本格的に物語が動き始めたような展開でしたね。サブタイトルも意味深で、今巻はあくまでこれからの物語の前哨戦に過ぎないといったところでしょうか。本格的に悪魔同士の抗争へと発展するのか、はたまたさらなる不幸がまだ見ぬ誰かに降りかかり、それが大きな事件となるのか、続きに期待ですね。
hReview by ゆーいち , 2009/03/21
- ナインの契約書 2 (2) (MF文庫 J に 2-2)
- 二階堂 紘嗣
- メディアファクトリー 2009-02
- Amazon | bk1
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ナインの契約書―Public Enemy Number91
人生に必要なのは、砂糖と好奇心とわずかばかりの悪意さ。
とある街のボロビルに居を構える『九探偵事務所』。そこで探偵業を営むのは、銀髪の美少女・
やはり恐ろしいのは悪魔ではなく人間よのお……。そんな感想を抱かざるを得ない結末を取りそろえた短編集。まぁ、最後の物語だけは、ハッピーエンド? な終わり方ですが、これはこれで悪魔すらときには騙してみせる人間の恐ろしさの一端であるという見方もできますね。
そんな感じで、ドロッドロに真っ黒なお話が続いたかと思ったら、次のお話で救いを見せてみたりと、意外に読後感は悪くなかったかな。
それもこれも、あくまである九が、悪魔のくせに人間が破滅する姿を見ることに、何らかの後ろめたい感情を抱えているように思える節があるせいかも。逆に使い魔たる一はおしゃべりで、自身の言のごとく悪意でもって人間に接するという人でなし。まぁ、人間じゃないですが。魂を差し出し、望みを叶えるために契約を行おうとする人間を、ひととは違う価値観ながらも押しとどめようとしてみたりと、もしかして彼女はかつては悪魔ではなく別の何ものかであったのではないか、なんて想像を飛躍させてみたりします。
そんな印象を確固たるものにしたのが、最後の挿絵の彼女の表情なんですが、終始しかめっ面、怒ったような口調、一に対する苛烈な仕打ち、とまさに悪魔、なんてキャラ作りをしているくせに、どこか根っこの部分では人間に対して少なからぬ好意を抱いているのかなあと思ってみたり。
むしろ、彼女と契約を果たした人間たちの望みの歪み、それ自体の想像の斜め上さに背筋を寒くしたりしますね。お互いがお互いを真に理解できないからこそ起こってしまった悲惨な事件、そこに通常叶うことなどない願いが叶ったとしたら、というイフが重なることで、それは悲惨を通り越して誰も彼もが救われない悲劇へと発展していく。そこにあるのは、愛情であったり、妬みであったり、哀しみであったり、寂しさであったり、過ぎた愛情が裏返ってしまった憎しみであったりと、縋る藁があったならばその先に地獄が待っていても掴まざるを得ない、そんな袋小路に迷い込んだひとたちの物語だったのでしょうか。特に「僕の、テディ・ブルー」は一見の価値ありかな。ヤンデレ的な意味で。
こういうダークな雰囲気の作品の中でもなかなか良い出来だったかな。イラストレーター繋がりで「麗しのシャーロットに捧ぐ―ヴァーテックテイルズ」辺りが好きだったひとは楽しめる可能性が高いかもしれません。あそこまで、怖くはないけれど。
hReview by ゆーいち , 2008/12/14
- ナインの契約書―Public Enemy Number91 (MF文庫J)
- 二階堂 紘嗣
- メディアファクトリー 2008-11
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麗しのシャーロットに捧ぐ―ヴァーテックテイルズ
いや、これはスゴいですね。富士見ミステリー文庫から出ること自体がスゴい。そして、中身の完成度も非常に高い。ミステリ調のホラーで、構成が意図的に複雑にしてあるせいか、序盤~中盤で主な登場人物が揃うあたりで、時系列と人物関係が混乱の極みに(^^; そして、それを一気に覆す終盤の展開がゾクゾクしますね。小さな違和感を覚えつつ読み進めていって、その正体に気付かされる瞬間の驚きはラノベではなかなか味わえないなぁと。
作者氏はこの作品がデビュー作のようですが、実力的には十分だろうなぁ。この路線で行くには萌え全盛の業界ではセールス的に厳しい部分はあるかも知れないけれど、それはそれ、富士ミスというある意味好き勝手できるレーベルで、好きなようにこの手の作品を描いてくれても良いかも。
イラストは『半月』の山本ケイジ氏。途中までどっかで見たことある絵だなぁと思いつつ気付かなかった私の目はきっと節穴。中身を確認しないで絵買いをした人は、さぞかしこの容赦ないダークな展開に打ちのめされたことでしょう。
私? 私はとりあえず目に付いた新シリーズやら新人作とかは何も考えずに買うので(笑) こういうストーリーはかなり好きですし、非常に楽しめました。
- ライトノベル | 富士見ミステリー文庫 | 尾関 修一 | 山本 ケイジ | 読書感想
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半月―山本ケイジ画集
- 2006-12-30 (土)
- ライトノベル
『半月』関係の未見のイラストもカラーで収録されていて大変よろしいのに、さらに橋本紡の掌編「花冠」がもう素晴らしい。短編集で終わったかと思ってたお話の続きが見られたことがなんとも嬉しいじゃないですか。描き下ろしのイラスト数点も『半月』の雰囲気を良く残していて、いや、もう、うわぁ……。
価格的には結構お高い一冊ですが、良かった良かった。
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