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学校の階段〈10〉
神庭幸宏。お前に俺から二つ名を送ろう。『茨の道』を進むお前に、敬意と激励を込めて――。
刈谷との階段レースに敗れた幸宏は、もはや目を背けることなどできなくなった内にある衝動に突き動かされるまま、再戦を望む。しかし、刈谷との再戦に全てをかけるかのような幸宏の態度は、彼に協力しようとする階段部の面々や、彼を案じる友人たちから孤立する結果となり……。そして、階段部の部員たちの与り知らぬ場所で進行する包囲網。決戦の日は近づいていく。
階段レースという他者から見ればまるで無意味に思える奇抜な競技を、真剣に取り組むという異色で熱血で青春な物語もついに完結。通してみると、部長の九重ゆうこに強引に勧誘され、入部させられた、主人公・神庭幸宏の成長の物語でありましたね。
物語が進むにつれて、幸宏の中でふくれあがっていった衝動。それは、かつて先輩である刈谷が通った道で、他者には理解されることのない孤独な道を歩ませる原動力。『先』を求め、至ろうとする彼らが伸ばす手をかわし、あるいは決して手が届かないかもしれない「それ」の答えを知ろうとするかのような決着のための階段レースが最後に待っていましたね。今までのようなスポーツとして、熱さを描くような描写ではなく、これまで幸宏や刈谷が階段レースを通じて得ようとしてきた形のないもの、そして自分と向き合うかのようなものでしたね。
結局、刈谷が求道者のように孤独を隠し、けれど諦めることなく探し続けた「先」や、幸宏が孤立し、苦しみながら、けれど諦めることなく求め続けることを決めた「先」についての明確な答えは明かされませんでした。よく分からない正体ですが、年を重ね、様々なことを経験し、得ることができ、あるいは見えなくなるそれは、きっと、彼らの年代の誰もが心の中で描き、願い、求めるような、漠然とした夢のような、そして青春という二度とない貴重な時間を輝かせる宝のような何かなのかもしれません。大人になることで、見えなくなるそれはきっと、もう手が届かなくなったとしても、階段を上るように歩みを止めなければまた違う何かが上に見えているのかも。
幸宏の苦しみとかに共感できないと、彼の行動が何ともちぐはぐで、周囲に迷惑をかけまくる存在に見えてしまいますが、それでも幸宏を支え励まそうとする友人や、部員たち、そして彼に想いを寄せる女の子たちの姿を見ると、彼がどれだけのものを、この1年で積み上げてきたか分かろうというものです。ひとつの締めくくりとなる卒業式での幸宏の送辞と、刈谷の答辞。熱いレースもそうですが、こんなまっすぐな心の描かれ方もまた、本作の魅力であったと思います。
受け継ぎ、そしてまた先達と同じように後から来るひとたちへ受け継がせていく。それが伝統となるような懐の深い校風の学校と、その象徴のような階段部という部活。エピローグで既視感を覚えるような展開を見、そしてそれから始まる、新たな階段レースを舞台とした青春の物語の予感を抱き、きっとまた、誰かが熱い物語を紡いでいくのだと、そう確信しました。
「階段部が大好き」その一言に全てが詰まっている、素敵な青春のお話でした。
hReview by ゆーいち , 2009/08/09
- 学校の階段 10 (ファミ通文庫)
- 櫂末 高彰
- エンターブレイン 2009-07-30
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学校の階段の踊り場
本当に、あの学校って騒動が大好きな人ばっかり集まってるんじゃないのかなあ。人のことは言えないんだけどね……。
本編はいよいよ次巻の10巻で完結。物語の終幕を直前に控えた段階での凪のような短編集。
本編の方は随分とシリアス分が増していて、いよいよクライマックスという雰囲気満点ですが、この巻に収録されているのは、割と軽めのエピソード。
それは、従姉姉妹におもちゃにされる幸宏だったり、むやみやたらにお気に入りの女の子を女神様とすべく大プッシュする女神委員会の野郎共だったり、あるいは体育祭の打ち上げにキャッキャウフフな女の子たちとそれと対極的にぐだぐだする男の子たちだったり、さらにはたった一つのプリンの行方を巡って火花を散らす生徒会の役員たちだったり。
このタイミングで刊行するのはちょっと時期的に遅いのかなあという気がしなくもないですが、逆にどのタイミングで読んでも、本編に影響を及ぼさないまさに外伝的なお話ばかりでしたね。
通して見ると幸宏と美冬のカップリングがあちこちで描かれてるんで、恋愛方面的にはそういうまとめ方をするのかなあ? なんか唐突という気もしないでもないですが、ドカンと大きな盛り上がりが最終巻にあったりするのかな?
hReview by ゆーいち , 2009/05/09
- 学校の階段の踊り場 (ファミ通文庫)
- 櫂末 高彰
- エンターブレイン 2009-03-30
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コラボアンソロジー2 “文学少女”はガーゴイルとバカの階段を昇る
とまあ、このくらいバカな男が吉井明久。うちの二年を、いや、全校を代表するバカです。
ファミ通文庫のコラボアンソロジー第2弾。今度は『“文学少女”シリーズ』『バカとテストと召喚獣』『学校の階段』『吉永さん家のガーゴイル』が生贄に夢の競演!
“文学少女”と乙女に集う召喚獣 / 野村 美月
バカテスと“文学少女”混ぜるなキケン、野村美月サイド。
腐女子属性を備えた遠子先輩ッッッ!? ダメだアブない、心葉、逃げてー!
作者自ら遠子先輩のキャラを崩壊させてますが、これはこれでアリ。伏せ字全開な台詞を本編さながらに高らかに告げるのは、どうなんだ、いったい。ある意味、これは心葉への精神攻撃。思い立ったが一直線な彼女の性格は、バカテス世界でも通用するなあ。
“文学少女”と殺された莫迦 / 井上 堅二
混ぜるなキケン、なコラボ、井上堅二サイド。
この作品自体は FBonline で既読でしたが、やはり見所は待望の挿絵が追加された、心葉の女装シーンでしょうか。女装が似合う主人公、ここ最近のトレンドですか?
それはそれとして、バカテス風味な“文学少女”なお話としてもなかなか楽しめました。題材にする作品の雰囲気を大事にしつつも、バカテスキャラの斜め上な会話と、それに頭を痛める良識派な心葉の対比が面白いですね。どこまで行っても苦労性なヤツよのう……。
天栗浜のガーゴイル / 田口 仙年堂
『学校の階段』×『ガーゴイル』
なぜか双葉と階段レースをすることになった幸宏。ハンディとして双葉の側にはガーくんまでいて。って、そりゃ反則だろな助っ人ですが、田口仙年堂の描く階段レースって感じで、フリーダムさはないけど、短編としてしっかりまとまってた印象。
そして、やはりここでも筋肉部は出てくるのね(笑)
バカと階段と召喚獣 / 櫂末 高彰
『学校の階段』×『バカテス』
櫂末高彰がバカテスキャラを書いたら、あれ、あんまり違和感ないじゃん。
ノリとか会話のテンポとかがかなり近くて所々で笑わせられましたね。
召喚獣で階段レースという展開も新鮮。相変わらず明久のバカッぷりが光り輝く展開でした。てか、明久、どの作品でも愛されてるなあ。
“文学少女”とやってきた走者 / 野村 美月
『学校の階段』×『“文学少女”』
野村美月が『学校の階段』を書いたらこうなった。他の作品とは一線を画するかのような本気さを感じます。おちゃらけた部分がなくて、野村美月が本気で『学校の階段』を書いてみたな印象です。
お互いの部員を一人入れ替えてみた階段部と文芸部。それぞれ勝手の違う部活で1週間を過ごすことになった心葉と幸宏の内面を野村美月らしい文章でしっとりと描いています。お相手の『学校の階段』はスポ根とか熱血とかそんなテイストの作品なんですが、それとは違った側面からキャラクターの魅力を描き上げています。
心葉と幸宏、自分たちが自分たちの居場所に居た理由を、居たい理由を、再確認させられる、そんなお話でした。良かったですね。
いやぁ、今回はどの作品も知っているので非常に楽しめましたね。そして、バカテスとのコラボの破壊力は高いなあ。もっといろいろな作品とのコラボも見てみたいものです。
hReview by ゆーいち , 2008/11/07
- コラボアンソロジー2 “文学少女”はガーゴイルとバカの階段を昇る (ファミ通文庫 こ 1-1-2 コラボアンソロジー 2)
- 野村 美月 ほか
- エンターブレイン 2008-10-30
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学校の階段〈9〉
……ここか。ここが僕らの世界ですか、刈谷先輩。
新年を迎え、階段部三年生の九重と刈谷の引退がいよいよ間近に迫ってきた。そんな中、次期部長を決めるため、残る部員4人による総当たりの階段レースが行われることとなった。自分の理想を追い求めるため、自分の想いを伝えるため、自分の強さを確かめるため、それぞれがそれぞれの目標へ向かうためにレースへと臨む。
毎回、誰かにスポットを当て物語が進みますが、今回は空回り気味な部活メンバー・井筒のターン!
彼の空元気で滑りがちなキャラクターと、それに反したかのような、ゆうこに向けるひたむきな恋心が、過去のエピソードによって語られます。そして、一世一代の舞台となる、部長決定戦を経て、井筒は自分の想いを、ゆうこにどのように伝えるのか、といったお話ですね。
そして、生徒会長となり、波佐間とのレースを経て、幸宏もまた変わりつつあるようです。作中を通して、彼が階段部での活動を通して見ている世界がゆっくりと変わって行っているかのような印象。彼が見る世界を理解できているのは、現時点では刈谷だけのようで、けれど、そんな幸宏の危うさは階段部の面々も気づいていて。泉が、幸宏に対して抱いていた危惧が、現実になりそうな展開なだけに、これまで山あり谷ありながら結束を保っていた階段部が、三年生の卒業と新部長の決定を機に、人間関係が歪んでいくような予感を抱きます。
物語的にはようやく幸宏が走ること、その抗えざる衝動の正体を見据え、覚醒した感じでいよいよクライマックス? 刈谷との真剣勝負の向こうに、どんな世界が広がっているのか、そこが何もない絶壁などではなく、さらに高みを目指すことのできる世界であればと思いますね。
で、華麗にスルーしてますが、幸宏を巡る恋愛バトルも加熱してる感じ。彼の与り知らぬところで、バチバチやってますなあ。美冬との微妙な距離感が微笑ましくて好きなんですが、他の女性陣もそろそろ本気モードっぽいですし、いったい誰が彼の心に入り込んでいくんでしょうね?
hReview by ゆーいち , 2008/11/04
- 学校の階段9 (ファミ通文庫 か 8-1-9)
- 櫂末 高彰
- エンターブレイン 2008-10-30
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コラボアンソロジー1 狂乱家族日記
- 2008-09-03 (水)
- ライトノベル
狂乱家族が他作品とクロスオーバー。悪ノリ上等!
『狂乱家族日記』と他作家とのコラボ作品集。それぞれの作品世界にやってきた凶華をはじめとする狂乱家族は、自重なんて言葉も知らずに大暴れ。
狂乱! ガーゴイル日記2054 / 日日日
『吉永さん家のガーゴイル』を日日日が好き勝手にしてみましたといった風情。狂乱家族の世界で、すでに役目を終え眠りに就いていたガーゴイルの元に現れた少女の依頼とは……。
ガーゴイルの世界を上手いこと取り込んでますね。オリジナルに比べるとやっぱり毒が強い気がするけれど、物語のオチの付け方は非常にらしくて良い感じ。というか、そもそもガーゴイルが封印されてるってところが疑問だけど、それはそれで。
御色町狂乱捕物日記 / 田口仙年堂
今度はガーゴイルの世界に狂乱家族がやって来て。
ママさん最強説がさらに真実味を帯びてます。傍若無人の限りを尽くす凶華と、ガーゴイルすら一撃で沈黙させる寡黙な主婦、恐るべし。
いや、この和み空間だからこそ許される展開かと。
狂乱スイート日記 / 佐々原史緒
『スイートホームスイート』を読んでいないのでさっぱり。
ノリはそのまんまで、生き生きと動いてますね。凶華と同じように手に負えない感じのアデルのツンデレ的行動はぃ良し。
狂乱すごろく階段日記 / 櫂末 高彰
『学校の階段』の階段部を巻き込んで、大すごろく大会、ってなんでじゃあ。
階段部部長・ゆうこと凶華のタッグはまさに最悪。悪のりを実現できてしまうコラボ作品ならではのトンデモ展開で、翻弄される他のキャラが哀れすぎますね。
狂乱家族になってよネ! / 佐藤 了
『私のKnightになってよネ!』未読なんです。
ラブコメ展開に重きを置いてる感じで、本編ではそういった部分は薄味ですから、ラブ分の補給にどうぞっていったところでしょうか。
――総じて短編集でかつコラボ作品なので、お話の整合性を求めるよりも、それぞれの作家が描く『狂乱家族日記』を楽しめという、お祭り的な作品集ですね。それぞれの作品を知ってれば楽しめるんでしょうけど、一部知らなかったのは残念。でも、公式にこういうクロスオーバー作品が楽しめる企画は面白いですね。第2弾『コラボアンソロジー2 “文学少女”とバカとガーゴイルと階段』の方はさらなる期待をしてます。
hReview by ゆーいち , 2008/09/03
- コラボアンソロジー1 狂乱家族日記 (ファミ通文庫 こ 1-1-1 コラボアンソロジー 1)
- x6suke、ほか
- エンターブレイン 2008-08-30
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