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鈴木鈴 Tag Archive

白山さんと黒い鞄〈2〉

stars 『わたしはあなたを信じている』。――そんなの、なんの意味もないよ。本当に信じてほしいのなら。わたしがあなたを信じていると知ってほしいのなら、行動で示さなくちゃ。口先だけなら、誰でもなんとでもいえるもん。わたし、頭が悪いから、他の人がなにを考えているかは全然わからないけど、そのことだけは、ようく知ってるんだよ。

白山さんの秘密を巡る騒動からしばらく経ったある日。白山さんと九衛という新部員も増えた図書館部にこれまで見たこともなかった部長・青嵐が相談を持ち込んでくる。「自分そっくりに化けた、偽物を見つけてほしい」。そして、その騒動の背後にはやっぱり、鞄の住人・阿頼耶識の姿が浮かび上がっていて……。

白山さん、かわいいよ、白山さん。

心を許した九衛と衡*1に見せる人なつっこい無防備な側面と、それ以外のひとたちに対するビクビク警戒した小動物的な側面がはっきりしてる白山さん。付き合いが浅いと、割と面倒な性格に思われそうな彼女ですが、そこは変人と懐の深い奇人揃いの図書館部、何とかなってる感じがしますね。というか、副部長の朱遊さんに至っては、煩悩と妄想が入り交じって大変なことになってますが、いや、その気持ちは分からなくはない、分からなくはないが、割と犯罪なので……っ!

そんな白山さん、衡に心を許したといっても、彼女の思っている信頼と、衡が思っている信頼の意味合いに幾ばくかのズレがあったみたい。対人間の付き合いというものが、基本、疑うことから始められた白山さんにしてみれば、衡のことを信じたいけれど、それをどう伝えて良いか分からないというのが難儀なところ。逆に、衡は彼女のことなら無条件に信じてしまいそうな、ともすれば危ういとも感じられるような気持ちでいるわけで、お互いがお互いを信じていながら、少しでも深い部分に至ろうとすると、とたんに腫れ物に触れるようなぎこちなさに変わってしまうのが、距離感が計れてないのかなあという印象を持ちますね。

もちろん、それを乗り越えて、もっともっと深く繋がりたいんだろうなあと思う仕草も表情も感情もひしひしと伝わっているのが、また可愛らしくて。事件を解決するための手がかりとして、キスをしなければならない、なんてベタな理由で自分の気持ちを再確認してみたり。相手が自分以外の誰かとキスをしたら嫌だと思う、その理由なんてもうひとつしかないでしょうね。その気持ちに恋とか好きとかいう言葉を当てはめられない不器用さが、鈍感主人公と、訳ありヒロインらしいといえばらしいくて、微笑ましくもありますね。

ただ、白山さんの人間不信の根は深くて、なるほど、九衛が衡のことをなかなか受け入れようとしないのも分かろうというもの。そんな九衛さえも、少しずつ認めようとする衡の努力はいつか実を結ぶのか。痛む傷をいつまでも避けては通れない、白山さんの心の深い部分に触れるエピソードを経て、彼女の笑顔が周囲に振り向けられると良いなと思うのですね。

……まぁ、それはそれとして、衡の最後の選択はアウトでしょう。思いっきりそこは「確認」を選択するべきでしょう。むしろ、選択しすべてが「確認する」くらいでちょうど良い、そんなイベントでしょ、まったくもう……。

hReview by ゆーいち , 2009/08/16

白山さんと黒い鞄〈2〉
白山さんと黒い鞄〈2〉 (電撃文庫)
鈴木 鈴
アスキーメディアワークス 2009-07-10
Amazon | bk1
  1. 衛と衡って字面似てるなあとか今さら思ってみる []

白山さんと黒い鞄

stars だから、コウ、覚えておけ。シロさまがおまえのことをいくら信じていても――いや、だからこそ、九衛はおまえのことを絶対に信用しない。

クラスメイトの白山さんは不思議だけれど可愛らしい女の子。平沢衡はひょんなことから彼女の秘密を知ってしまう。白山さんがいつも抱えている黒い鞄には――女の子が住んでいた!? さらに、その鞄からとんでもないトラブルのタネまで飛び出して、衡は白山さん自身の問題に巻き込まれていく。そして、衡が所属する図書館部の厄介な部長と部員まで首を突っ込んできて事態はどんどん混迷の度を深めていって……。

まだだ、まだまだ黒くない!

鈴木鈴の新シリーズは割と明るい出だしで開幕。まぁ、前科が色々あるので、どこで反転して鬱々真っ盛りなストーリーになるのか分かったものじゃありませんが(笑)

おどおどしながらも決めるところでは決める、でもやっぱり天然入ってるぽけぽけな白山さんと、彼女をひたすら守る生真面目だけどわがまま、世間知らずな九衛。そんなふたりと関わってしまった衡は、新しくできた友人の問題を解決しようと力を貸すけれど、彼女たちの抱える事情というのは、これまた非日常なものでさあ大変。

もっとも、衡自身も「呪い」と呼ぶような不運体質だけれど、それがあるからこそ白山さんの事情を聞いても引いたりしなかった? それ以外で彼の体質、あんまり物語に関わってきてないですよねえ。これからの伏線として用意されたのでしょうか?

けれど、そんな白山さん、自分の問題を誰にも明かせない事情は、その特異性だけでなく、彼女自身の心に刻まれているっぽい苦い過去も大きな要因になってそう。だからこそ、九衛は白山さんをひたすら他人から遠ざけようとするわけで、傍若無人に見える九衛の行動もそんな理由を知ってしまうと憎めない……、かな? まぁ、大切なご主人を取られまいと必至になってる様を愛でるという感じに近いような気もしますが。

最終的に、衡は他人との深い関わり合いを恐れていた白山さんの心を少しだけ開くことに成功しますが、まだまだ前途多難? 今後、彼女と一緒の時間が増えていけば巻き込まれるトラブルは加速度的に難儀なものになっていくだろうし、衡自身の問題が今後尾を引く可能性もあり。何よりも、白山さんの笑顔を独り占めしようなんて欲が出てきたらもっと大変になっていくんだろうなあ。黒くならない程度にシリアスにラブコメにがんばってほしいですね。

……いや、別に真っ黒な展開が来ても驚かないんですが。

hReview by ゆーいち , 2009/04/11

白山さんと黒い鞄
白山さんと黒い鞄 (電撃文庫)
鈴木 鈴
アスキーメディアワークス 2009-03-10
Amazon | bk1

吸血鬼のひめごと〈3〉 The Secret of the Wish

stars ――ねえレレナ。お話ししようよ。昔のお話。楽しかったときのお話。しよ。

かつての生活を取り戻すという願いに突き動かされた舞が、レレナの日常を浸食していく。懐かしい顔と声と仕草に、そして彼女の隣に立つツキシマの姿に、レレナの心は削られていく。何も失いたくはない、そんな甘えなど許されるはずもなく、レレナと朧はツキシマによって持ちかけられたゲームによって、すべてを決することを余儀なくされる。レレナの命運を朧とツキシマの命によって決定づける、そんな残酷なゲームに、レレナはひとつの決意をする。

ああ、これで完結かあ。

前作から残されてきた、レレナの心に一つの決着を付けたエピソードが幕を閉じました。
前巻で登場した舞によって、かつての日常と今ある日常、その二者択一を迫られたレレナの下した決断は、「選択をした」ということ自体にも価値があり、そして彼女が過去との決別を果たし、そして新しく得た日常を守り抜くという決意を貫き通したという点において、彼女の成長を感じさせるものでした。

舞と月島、どこまでも大切に思っていたはずのふたりとの決別。それは、レレナにとってもいつか果たさなければならない痛みであり、これから生きていくために必要な通過儀礼。忘れることで何かが許されるわけではないけれど、その記憶に囚われて、前に進むことができないからといって許されるわけでもなく。過去に囚われ、縛られ、今ある生を罪悪感と恐怖感にまみれて生きてきたレレナが、ようやく今ある日常へと踏み出すことができたというラストは、前作の虚無感たっぷりのラストと好対照で、ここでもって、ようやく彼女の心に救いがもたらされたんだろうなあという思いです。

そんな彼女を日常に縛り付けてくれた青磁とたまについては語り足りない部分もあるので、その辺は前作みたいに番外編で補完してほしいかな。

hReview by ゆーいち , 2008/07/17

吸血鬼のひめごと 3
吸血鬼のひめごと 3 (3) (電撃文庫 す 5-17)
鈴木 鈴
アスキー・メディアワークス 2008-07-10

吸血鬼のひめごと〈2〉―The Secret of the Past

stars レレナじゃない。なにしてるの、こんなところで

夏祭りの夜、レレナと朧たちが遭遇した男は、朧にだけ分かる「臭い」を放っていた。翌日、その場所で大量の血痕が発見された報を受け、朧は男が『貪』との関連があると推測する。青磁とレレナに男を捜させる朧。その最中、行方をくらませていた絵里香を見つけたとの知らせを受け、レレナが向かった先に待ち構えていたのは、忘れようもない彼女だった……。

あああああああ……。

もう、バッドエンド路線まっしぐらじゃないですか。レレナがどこまでも不幸になっていく。前シリーズの面影を引きずって苦悩して生きていくだけかと思っていたら、ここで恐らくはレレナにとっては最大級の爆弾が投下されてしまいました。

帰りたいと願った日々、ともに生きたいと願ったひとたち、そんな思い出の中にある風景を、最悪の形でレレナの眼前に叩き付けるというのは、正直堪えます。表紙を見た段階でイヤな予感はしていたんだけれど、今回だけのスポット参戦だと思ったんだよう……。

もう、朧とクロサキの因縁とか、ふたりが想いを寄せていたマユラの存在とか、新たに登場した『貪』の手駒たる人物とか、そんなのはどうでもいいです。ただただ、これからレレナに容赦なく襲って来るであろう苦悩と絶望に、悲しくなるだけ。

……いや、こういう風にダメージを受けるとは思っていなかったんだけれど、この展開は卑怯すぎる。正直、先を読むのを止めたくなるくらいの、最悪の展開だけれど、けれど、多分次も読んでしまうのだろうなあ。救いのない結末に向かって、進んで行っているのは、もう、恐らく間違いがなさそうですが。

感情的なことを書くと、ホントに、この展開は許せない。彼女たちの、幸せだった日々を、完膚無きまでに穢してくれたので。ただ、先も読むであろう、そんな自分の選択が、何ともジレンマでイヤなんですけどね。作者の狙い通りにハマってるかな、これは……。

hReview by ゆーいち , 2008/03/26

吸血鬼のひめごと 2
吸血鬼のひめごと 2 (2) (電撃文庫 す 5-16)
鈴木 鈴
メディアワークス 2008-03-10

吸血鬼のひめごと―The Secret of Vampires

stars 完結から2年 まさかの続編登場!

大切なひとたちとの別れから2年。時間は優しく、それ以上に残酷に、彼らの面影をレレナの中から薄れさせつつあった。今ではもうぼんやりとした面影しか思い出すことのできなくなってしまった優しい人たちと、今、この場所で自分を慈しんでくれている両親のおかげで、半吸血鬼として生きざるを得なくなった彼女は、静かに、平穏な日々を送っていた。朧と名乗る『主人』たる吸血鬼が、彼女の学校に現れるまでは……。

──まさか続編が出るなどとはお釈迦様でも思うまい。というか、他のシリーズはイマイチだったから、本作が出たとかの理由だったらしょんぼり過ぎる、な『吸血鬼のおしごと』の続編。

前作のラストで、ただひとり取り残されたレレナの回想から始まる本編。最初の2ページでいきなり涙腺やばくなる私はどんだけ思い入れ持ってるんだ。いや、強烈に印象に残ってはいるけれど、そこまでとは思わなかったけれど。名前も思い出せないのに、亮二や舞と暮らした日々だけはしっかり覚えていて、戻らない日々、幸せであったと思える日々がかつてあったという事実に、折り合いを付けきれないレレナがなんとも悲しい。

新しい物語のスタートは、朧という少年の姿をした吸血鬼の『主人』との邂逅から。唯一といっていい友人・絵里香、亮二の面影を重ねてしまった少年・青磁らとの交流。そして、再び待ちに暮らす人々の脅威となりうる化け物 “貪” と、朧と敵対するもう一体の吸血鬼。物語の始まり方は、前作の1巻を彷彿とさせつつも、最初から雰囲気がかなりダークに感じられます。もう、こっち方面で進める気満々なんですかね。

レレナが過去を引きずり、亮二の吸血鬼としての面影を朧に、人間としての面影を青磁に重ね、大切な親友であるはずの絵里香との深い断絶を感じたまま次巻へ続く。謎も残されたままだし、問題も全然解決していないし、今後の展開もなんだかんだで楽しみに思えてしまいます。いや、もう、ダークだろうとなんだろうと慣れてしまえばどんとこいですよ?

hReview by ゆーいち , 2007/12/09

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