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幻想譚グリモアリスII 千の獣が吼ゆるとも
私は戻ってきたわ。戻ってきたのよ。貴女をこの手で――殺してあげるために。
冥府から追われる身となったアコニットを匿う誓護は、彼女を変装させ、自身と同じ白耀学園へ通わせていた。迫り来る危険から逃げるでもなく、日常生活を続ける誓護の、本当の目的を聞き出すこともできず、苛立ちを募らせるアコニット。誓護はそんな彼女の気持ちをよそに、着々と自らの策略を実現させるために行動を重ねていく。そして、次なる冥府からの追っ手が現れて……。
異能バトル全開!
レーベル移籍しいたことで、物語の方向性がかなり変わってきてますね。あとがきでも触れられてますが、前シリーズの夜想譚では主人公の誓護が力のない人間という身で、知恵を絞って教誨師や罪人と渡り合うという展開から、本シリーズでは異能の力を身に着けた彼が、守るべき対象となったアコニットのために、追っ手となった冥府からの刺客や、さらには人界に生まれた異能者たちと戦うという展開になってますね。これもファンタジア文庫というレーベルカラーゆえの路線変更でしょうか。
そんな新展開の本作ですが、誓護が力を得たことで、アコニットが守られる立場になり、そのせいか、彼女がか弱いお姫さま的な、あるいは誓護にデレまくってるような描かれ方をされるようになってきてるのは少々残念ですね。アコニットは、誓護と出会った当初のような気高さや高潔さ孤高さなども魅力の一端だったと思うだけに、力を失ったとはいえ、弱々しさを全面に押し出し、誓護に依存しているような姿にちょっと不満を抱いてしまいます。これから、誓護が掲げたような大きな目的を果たしていく過程で、彼女がまたどう変わっていくのかに期待したいですね。
さてさて、今回のお話ではアコニットに因縁深い彼女が復活したり、その手駒たる少年少女たちと誓護の対立が明確化、そして、彼の最愛の妹にも魔手が……といったところで次回に続いて、なかなかに先が気になるところ。
誓護にとっては、彼が友人と定める存在を選択させられたという苦い展開ですが、彼が彼自身の決意をもって、アコニットを選んだというその事実、彼女にはまだしっかりとは伝わっていないけれど、それは誰も彼もに裏切られ、希望をなくしかけているアコニットにとって、唯一で最大の救いなんでしょうね。
hReview by ゆーいち , 2008/10/30
- 幻想譚グリモアリスII 千の獣が吼ゆるとも (富士見ファンタジア文庫 か 7-1-2)
- 海冬 レイジ
- 富士見書房 2008-10-20
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幻想譚グリモアリスI されど魔刃の名のままに
大丈夫。君のことは、僕が護るよ。
奇妙な眠り病が世間を騒がせる街。誓護はクラスメイトの女子に呼ばれ、学園の時計塔へ向かった。しかし、そこで誓護を待ち受けていたのは、突然の轟音と地に倒れ伏すクラスメイト、そして黒い稲妻をその身に纏った少女だった。見覚えのないはずの少女、自らを教誨師と称する彼女に、誓護は既視感を覚える。知らないはずなのに知っているはずの彼女の正体は……?
富士見ミステリー文庫からファンタジア文庫への移籍。仕切り直しかと思ったら、これまでの物語をしっかりとあったものとして踏襲し、けれど上手いこと再スタートを切る展開ですね。
レーベルのカラーが変わったせいか、主人公の誓護が力を手に入れ、アコニットと共に戦いに身をさらすという展開になっていくようですが、前シリーズみたいな推理や心理戦といった色が薄れてしまうのは、それを知っている人間ならではの残念さなんでしょうかね。
力を手に入れ強くなった誓護とは反対に、叛逆の罪により弱くなってしまったアコニット。気高さはそのままだけれど、ときおり見せる弱さや甘えなどは、やはり可愛いもので、恋愛方面でも進展があるのかな。シスコンでヘタれでキモいと言われる誓護は、アコニットと距離をどういう風に定めていくんですかね?
hReview by ゆーいち , 2008/05/22
- 幻想譚グリモアリスI されど魔刃の名のままに (富士見ファンタジア文庫 187-1)
- 海冬 レイジ
- 富士見書房 2008-05-20
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魔女よ蜜なき天火に眠れ──夜想譚グリモアリス 3
バレンタイン チョコレート お菓子の家 そして惨劇のお味はいかが?
バレンタインの日、自宅にて祈祝とチョコレート作りに興じる誓護のもとにアコニットが訪れる。その日、とあるイベントが開かれ、そこで食べられる特別なトリュフをご所望とのこと。姫のご意向に沿って、祈祝も含めた3人で向かったその場所は、年々行方不明者が出るという不穏な噂が流れていた。
異界の勢力争いや、アコニットが背負うアネモネの凋落の原因となったとおぼしき人物の登場など、地上と異界のそれぞれで繰り広げられるスケールの大きなお話になってきましたね。そして、アコニットの可愛さも右肩上がり。人界のスイーツの美味しさに魂まで奪われてしまったかのような彼女の恍惚とした表情やら、バレンタインイベントにかける意気込みなど、これまでのプライドの高い高貴さとは別の、少女らしい側面が少しずつ誓護にも見せてくれるようになってきた感じ。信頼の証と取るに十分なものですね。
不穏な噂が流れる舞台では、当然のように誓護は事件に無理矢理巻き込まれ、祈祝が人質に取られてしまうという彼にとっては最悪の事態で、けれどそこで真価を発揮するのが誓護のスゴいところ。場所を同じくしてアコネットの身に起こったトラブルも抱え、2重の責任に縛られながらも、しっかりと乗り切ってみせる辺りが彼の真骨頂ですね。
今後の展開に大きな影響を及ぼしそうな人物も複数登場し、異界における支配者層・麗王六花内の、未だ見えぬ思惑のうごめきも感じます。新キャラ・リヤナは誓護の言葉に心揺らされ、彼女なりの決意を持って退きましたが、囚われの身となっている鈴蘭を口説こうとした勢力の一派である以上、またアコネットと誓護の前に現れる日がきっと来そう。誓護に抱いた彼女の気持ちが本物かどうか、アコネットとの間に別の火種が燻っていますが、そこはそれ、上手いこと盛り上がってくれるでしょう。
そして、エピローグはとても良かった。事件が解決し、再び自らの世界に帰る前に、アコネット手ずから渡されたチョコレートと、問いかけの言葉。彼女の毅然とした態度とはちょっと違った口調と上目遣いな仕草は反則的。イラストと相まって、大変可愛らしく見えますこと見えますこと。どんどん可愛くなって行っている、アコネットと誓護の恋愛以前にも見える幼い想いの発展にも期待です。
hReview by ゆーいち , 2008/01/06
- 魔女よ蜜なき天火に眠れ (富士見ミステリー文庫 66-10 夜想譚グリモアリス 3)
- 海冬 レイジ
- 富士見書房 2007-12-08
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堕天使の旋律は飽くなき
教誨師再び 無実の罪を晴らすために今度は誓護は東奔西走
妹の祈祝を溺愛する相変わらずなシスコン主人公・誓護は、クラスメイトの美赤の紹介でとあるフルート教室へ見学に。その帰りの道すがら、美赤から語られる親友の死。時を同じくして再び誓護の前に姿を現すアコニット。美赤を裁くために遣わされる教誨師・軋軋。暗躍する狂気の鈴蘭。美赤を信じ、彼女の無実を証明するために誓護が行動を開始する。過去の事件の真実はどこにある?
この事件の真相というか、黒幕はミステリものとしてどうよと思わなくはないのですが、事件の当事者たちの思惑の錯綜具合とか、事件の根底にあるすれ違い具合とか、なかなかに悲劇的な事件でした。登場人物が少なめで、ほぼ消去法で誰が怪しいかとかは、過去の再現とかを読んでいけば思いつくのですが、最後の最後の仕掛けは予想の斜め上。教誨師の原則とかそういうのを語っておいて、あっさりそれを翻してきますか。
アコニットがだんだんと柔らかくなってきてますね。人間なんてと思いつつも、彼女にとっての誓護の存在がどれだけ大きくなってきているかの証左。友人らしい友人を、身の回りに持たないアコニットだからこそ、彼女が誓護に告げた、盟友という言葉に重みを感じます。彼女が誓護に語れない秘密があるように、誓護が誰にも語らない秘密があるようで。その辺についても、信頼が積み重なってきているこの先において、どのような真実が語られるのかも気になりますね。それにしても、この微妙なデレぶりはかわいいですなあ。
そして、鈴蘭とアコニットの間にある気持ちのすれ違いがまだ謎。互いに友人関係を保っていた時代もあろうに、何が原因で一方は壊れ、一方はその名声を泥にまみれさせてしまったのか。アコニットが抱えている問題は、誓護と祈祝の関係に何か重なるものがあるようで、その辺の語りも含めて、二つの世界を挟んだ物語がどのように展開していくのか楽しみです。
hReview by ゆーいち , 2007/08/14
- 堕天使の旋律は飽くなき (富士見ミステリー文庫 66-9 夜想譚グリモアリス 2)
- 海冬 レイジ
- 富士見書房 2007-07
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かくてアダムの死を禁ず
主人公のシスコン具合にドン引き アコニットはいいツンデレ
修道院を訪れた主人公・誓護と妹の祈祝が巻き込まれた一夜の怪奇譚。超常の存在、教誨師・アコニットの代理として、過去に起きた殺人事件の犯人を捜し出すことができなければ、誓護が地獄へ堕とされる。いのりを守るためにも、なんとしても真実に辿り着かなければならない……という感じでなかなかミステリ風の物語。
富士見ミステリー文庫なのにラブ分が薄めなのも意外。いや、誓護の祈祝への過剰なまでの愛情の注ぎ方だったり、登場する女性陣、修道女の真白だったり、誓護の叔父・鏡哉の秘書・姫沙だったり、あるいは誓護の継母だったりの歪んだり、道を誤ったりした愛憎はそれはもうずびっしりとありますが。
過去を視たり、空間を隔絶したり、雷を操ったりと教誨師の能力がなんでもありなわりに、誓護を使わざるを得なかったアコニットの理由が、作中で語られた断片的な情報だけではちょいと弱いかなと思いますが、二転三転する真相への道行きなどはなかなか面白いですね。舞台に集った誰もが抱えている罪の、どれもが裁かれるべきでありながら、裁くものがいないという状況も、皮肉が効いてるかと。
ただ、時系列がバラバラになってるのはミスリードを誘うためとはいえ、ややこしい構成。わざわざエピソード番号振ったりしてますけど、この構成が奏功してるかどうかは微妙かなあ。
キャラクター的には、女性陣にシスコン具合をひたすら罵倒される誓護が面白いですね。自覚ありながら、祈祝以外の女性に興味示さないなんてのは、それこそ真性(笑) 真白の毒舌が外見とのギャップが激しくて悶えたり、と序盤の会話シーンなどは非常に楽しいです。中盤以降はどんどん重苦しくなっていって、そんなものを楽しむ場合じゃなくなりますが。
アコニットは、彼女自身が人間を信じないという態度を固持しつつも、誓護のおよそ常人とはかけ離れた思考と他者への想いに触れて、少しずつ考えを変えていくあたりの描写は良い感じですね。最後の、もう一人の教誨師・鈴蘭への啖呵については、急激な心変わりとも思えますが、誓護との別れのシーンだったりは、素直に美しいなと思えますね。
シリーズ化が念頭にあるのか、設定が十分に明かされてないのが消化不良感の原因だとは思いますが、その辺が語られる第2巻は出るのかどうか? やけにコンピュータ用語が使われていたり、誓護らの現し世をネットゲームに例えていたりと、そもそも作品世界が仮想世界何じゃないかという野暮なツッコミを幻想してしまいました。
ちなみに、花言葉事典によれば、アネモネの花言葉は「はかない恋」「恋の苦しみ」「薄れゆく希望」「清純無垢」「無邪気」「辛抱」「待望」「期待」「可能性」、特に赤いアネモネは「君を愛す」だそうで。意味深ですが、作中で語られたアコニットの過去、裏切りへや過去を視る事への恐れの原因についても大方の予想通りって感じですかね。
ついでに、鈴蘭は「幸福が帰る」「幸福の再来」「意識しない美しさ」「純粋」だとか。
なるほどねぇ……。
hReview by ゆーいち , 2007/06/03
- かくてアダムの死を禁ず
- 海冬 レイジ
- 富士見書房 2007-03
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