れでぃ×ばと!〈10〉

2010年2月12日

stars 私のお礼はそんなものじゃありませんわ。ええ、食事を奢るような即物的で安易なお礼とは訳が違いますわよ。私が提供するのは、下手な高級車や宝石よりもずっと価値のあるものですわ。お礼というのは――私とのデートのことですわ。

見た目“やんきー”な執事候補生・秋晴。いつも受難続きの彼だが、今回はなんと、先日交わした約束通り、“れでぃ”たちとデートをすることに!?アキバ系王女様ピナとは観光スポット・秋葉原へ。みみなや鳳も従えて、オタクの聖地でとんでもない展開に…。生粋の英国令嬢セルニアとは二人っきりで庶民派屋台でお食事に。こっそりとあとをつける朋美と大地はその様子を見て気が気じゃないようで…。さらには大地を伴って、女子二人とダブルデートまで。ドジっ娘メイド早苗と体を絡ませ合いながらの氷上スケートという未知の経験を堪能する…。お嬢様&メイドさんとドキドキな逢い引き3連発な最新巻。

[tegaki font="crbouquet.ttf" color="pink" strokecolor1="HotPink" strokesize1="4″]何かが変わっていく予感![/tegaki]

顔をつきあわせれば言い合い衝突し合いな秋晴とセルニアの関係も前巻の看病イベントを境目にぐんと勢いが付いて変化していきそうな雰囲気。

お礼代わりのデートは相変わらず何かにつけてぶつかり合うふたりだけれど、そのぶつかり合いが楽しいだとか気が楽だとか、そんな意見では共通してるあたり、ただの悪友・腐れ縁・因縁の仲なんてくくりから、さらに一歩踏み込んだ関係にすでになりつつあるような。

それにどんな名前を付けるのか、当の秋晴自身は、一番気の置けない異性の友人レベルからはみ出ることはなさそうだけれど、一方のセルニアは、もはや自分の彼への気持ちが、紛う事なき恋ごころであることを自覚したわけで。残念ながら彼女の性格上、自分からその思いをぶつけて彼をモノにしようなんて方向には行かなそうだけれど、自分を磨き、自信に満ちた態度で、彼の気持ちを自らに向けてみせると、誇り高くあり続けてくれそうな気も。よく分からない微妙な気持ちに振り回されていた頃とは違って、はっきりと形が見えたなら彼女は強そうですからねえ。

もう一方の対抗馬的な朋美は、相も変わらずの傍観者ぶり。彼女の停滞がここのところずっと続いていますが、そんな朋美をよそに心の天秤は大きく揺れ始めてるのに、気づけているんでしょうかね? 秋晴取られたくない、そんな気持ちはセルニアと共通していても、その根底にある感情の色と温度にまだまだ差がありそうだけれど、距離の縮まりつつある彼らの間に、持ち前の策士ぶりをどう発揮して割行ってくるのやら。影の薄いまま後れを取るとは思えませんが、ずいぶんと水をあけられてしまったような気がしますね。

番外編では毎度毎度の翻弄されっぷりを発揮する大地。ナチュラルに自分の気持ちを逆なでしてくる秋晴に対して、愛想を尽かさず付き合う大地の心にも、ぐさりと刺さる一言があったり。秋晴に向けている自分の気持ちが、友情なのか愛情なのか、今までごまかしてきた、気づかないふりをしてきたその正体をを半ば強引に認識させられて、大地の頭もぐるぐるぐるぐる。本編のとんがりまくった女性キャラたちよりよっぽど純真な乙女ゴコロに気づかない気づけない秋晴は万死に値するような気もしますが、その正体がばれたら主人公の交友関係はさらに混迷を深めること間違いなしな情勢。やっぱり、大地のポジションは、打ち明けられない自分の気持ちをひたすら抱えたまま、にぶちんな秋晴の言葉と態度に一喜一憂するという報われないものなんでしょうかね?

hReview by ゆーいち , 2010/01/17

れでぃ×ばと!〈10〉

れでぃ×ばと!〈10〉 (電撃文庫)
上月 司
アスキーメディアワークス 2010-01-10