学戦都市アスタリスク 03 鳳凰乱武

stars 目を覚ませ、イレーネ! 力と大切なものとを混同しちゃダメだ! 本当に大切なものなら両手で掴め! 今、君が望むのはどちらの手だ!

学戦都市アスタリスク 03.鳳凰乱武 書影大

鳳凰星武祭、開幕――。綾斗とユリス、紗夜と綺凛の両タッグは危なげなく予選を突破し、本戦に突入する。アルルカントのエルネスタ・カミラ組など、強敵も順当に勝ちあがるなか、綾斗はふとしたきっかけで暴漢に襲われていた少女プリシラを助ける。そこに駆け付けたのは、彼女の実の姉にして純星煌式武装《覇潰の血鎌》の使い手、《吸血暴姫》イレーネ・ウルサイス。――綾斗たちの次の対戦相手だった。
「今回あたしがディルクから受けた命令は──天霧綾斗、あんたを潰すことだ」
ついに牙をむくレヴォルフの刺客、そして明かされるクローディアの秘密とは――!?
最高峰の学園バトルエンタ、武が乱れ翔ぶ第3弾!

役者も揃い、ようやく本編、鳳凰星武祭へ突入か? そして、前巻ではめっきり影が薄くなっていたユリスの見せ場も満載。

このシリーズ、誰がメインヒロインか微妙なところはありますが、やはり綾斗が力になると決めたユリスの扱いが、主人公の中では一段上になっているのかなあ。幼なじみの紗夜とか、可愛くて強い後輩の綺凛とかも扱いは平等に良い感じになっているんですが、描写の多さからしてそんな雰囲気が。まぁ、まだまだ綾斗の中ではそういう方向での区別というか意識はないようで、彼自身は、失踪している姉の行方を探るというのが最大の目的なのが変わらない以上、周囲の女の子たちは苦労するのが目に見えていて、応援したくなってしまいます。

鳳凰星武祭はタッグによるトーナメント戦。綾斗・ユリスペアのお披露目に始まり、強敵となりそうな他の学園の主力たちも続々と登場。今巻のメインイベントとなったレヴォルフ学園のイレーネの他にも、前巻で因縁を残したアルルカントのおそらくは最大の関門になりそうな自律兵器ペアみたいなトンデモや、まだ見ぬライバルも数多く。

今までの1対1のようなシンプルなバトルから、タッグ戦になって敵味方4人が乱れ飛ぶバトルはなかなかに熱いですね。主人公勢の力は序盤では圧倒的すぎて一瞬で終わるくらいにはレベルの違いを見せていますが、後半よりいよいよ始まる本戦は一筋縄ではいかなそう。トップクラスの実力を持っていながらも、決して最強ではない辺りが絶妙なパワーバランスだなあと感心します。タッグ戦で1対2という構図になったら勝利も危ういと自覚し、連携強化のために練習をするとか努力を続ける主人公、嫌いじゃないですよ。能力解放の制限を隠しつつ、戦いを盛り上げるためのパフォーマンスを見せるという戦略も考えているなあと思わされます。

戦いに向かう選手たちと、その裏でバックアップに努める人たち。学生皆で盛り上げる最大のエンタメであるということがよく分かる星武祭の開幕となりましたね。

それにしても、この主人公、いい男過ぎますな。ハーレムルート突入しつつあるのに、それを余り意識せずに、戦いの方を向いているというストイックな姿勢はなかなか見ない主人公像かも。戦うということに大切な意味を見いだしている綾斗の姿勢は、相対する側としても決して憎しみだけで戦えるような相手には映らないのかもしれませんね。だから、負けた側もどこかすっきりと、その結果を受け入れ、彼のことを認めるようになっていく。戦うことで繋がりが生まれ、広がっていく輪がある、バトルもののお約束ですが、それが気持ちいい!

激闘を終え、結果的に自分に科せられているハンデが白日の下にさらされた綾斗。休む間もなく、連戦が待っているとか、目の前の戦いを勝ち抜くだけで終えられるほど、この星武祭、甘くはないのですね。次の戦いが始まるまでに、自身の調子を取り戻せるのか。彼の中にある封印と向き合う次巻。謎に包まれたままの彼の姉の姿もまた語られる回想にも期待できそうですね。

hReview by ゆーいち , 2013/05/26

学戦都市アスタリスク 03.鳳凰乱武

学戦都市アスタリスク 03 鳳凰乱武 (MF文庫J)
三屋咲ゆう okiura
メディアファクトリー 2013-05-23