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“文学少女”見習いの、初戀。
わたしはハッピーエンドを信じてる。運命がどんなに苦難を用意しても、あきらめずに乗り越えて、二人はいつまでも幸せに暮らしました――そんな風に終わる物語もあるって。
学園に新入生として入学した日阪菜乃は、文芸部部長・井上心葉と出会う。心葉に惹かれ勢い任せに文芸部に入部した菜乃だが、彼女の行動は空回り。心葉の心の中にすでに宿っているひとりの“文学少女”に叶うべくもなく……。しかし、菜乃がとある事件に巻き込まれ、進退窮まったとき、心葉は彼女を助けるために行動を開始する。
いやぁ、あの見事な完結で終幕した物語の外伝ということで、期待不安入り交じった本作でしたが、そんな不安なんてあっさり吹っ飛ばしてくれるだけの内容。遠子先輩は物語の舞台から降りてしまっても、この作品はやっぱり“文学少女”の物語なんだと強く強く実感させられる内容でしたね。
遠子先輩は卒業、心葉は彼女の跡を継いで文芸部の部長に就任。部員も彼ひとりという状況のその部に、新入生の菜乃が入部したところから始まる物語。心葉に一目惚れしてしまった菜乃のアタックに動じもせず淡々と自分の気持ちを形にするために、約束を守り続けるために小説を書き続ける心葉の姿は、かつてのシリーズで見せられた頼りなさの雰囲気が随分と薄まっているような。というか、下級生に対してやけに強気じゃね? 菜乃に対する Sっ気混じりの行動は一体……。まぁ、これまでの彼の周囲にいたひとたちって、誰も彼もイケイケで押しまくりなひとたちばっかりだったからなあ、そんな反動が出ているのかも。
そんな和気藹々(?)な部活風景から一転、菜乃が巻き込まれた事件は、まさにこのシリーズの流れを色濃く受け継ぐ顛末。切ないやら美しいやらやるせないやらで泣ける展開でもう。どこまでも純粋にひとを愛してしまったがゆえに、その気持ちを全うすることができなくなってしまった結果としての登場人物たちの選択とその結果。彼の言葉と思いの形の現れと、その真相を心葉が想像してみせる解明のシーンは、遠子先輩の語り口とはまた違った想いに満ちていますね。こんな風に、彼女の面影と想いがしっかりと後輩に受け継がれているんだなあ。その気持ちを受け取った心葉が、それを果たして菜乃に伝えることができるのやら。事件決着後の心葉が菜乃に告げた言葉は、やっぱり、そういう意味なんでしょうかね?
hReview by ゆーいち , 2009/05/10
- “文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)
- 竹岡 美穂
- エンターブレイン 2009-04-30
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“文学少女”と恋する挿話集 1
ねぇ、心葉くん。心葉くんも先輩に、『愛しき言』を、尽くしてねっ。わたしを、心葉くんのお話で、おなかいっぱいにしてちょうだい。
ファミ通文庫公式サイト FBOnline に掲載された「“文学少女”の今日のおやつ」などに加え、書き下ろしも収録した短編集。“文学少女”シリーズのこれまでとこれから、そんなどこかに挿話される、天野遠子と彼女を取り巻くひとびとの物語。
本編が巻が進むにつれて重々しい雰囲気になっていったのに比べれば、明るい感じがして新鮮な印象を受けた短編集。
コミカルな描写が多くてくすりとさせられたり、けれど、やっぱり遠子先輩の作品への愛は変わっていなかったりと、本質は一緒だけれど、彼女の周囲のひとたちに焦点を当てると、また違った世界が見えてきますね。
特に、美羽や麻貴のエピソードについては、本編が遠子先輩と心葉の物語へ収束していったおかげで、見てみたかった部分ではありましたしね。心葉への囚われを断ち切って、自分の足でようやく歩き始めることができた美羽や、遠子先輩と出会った頃の麻貴の姿、そして関係があったのは分かりつつも、あっさりと流されていた感じの流人の内面など、今読んでみるとなるほど、なお話が書き下ろされているのが良いですねー。これは、本編を読み終わった後だからこそ、抱ける感覚かもしれません。
そして、本編の結末とエピローグの間に入る、心葉と別れた後の遠子先輩のお話が切ないですね。『スノーグース』の文章に想いを重ねて、ひとり涙を流す彼女の姿にこちらまで苦しくなるかのよう。こんな離ればなれの時間があったからこそ、あの再会をふたりがどれだけ待ち望んでいたのか、分かろうというものですね。
今回語られなかったキャラのお話は、次に収録されるとのことなので、そちらも楽しみですね。
hReview by ゆーいち , 2008/12/31
- “文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫 の 2-7-1)
- 竹岡 美穂
- エンターブレイン 2008-12-26
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“文学少女” と神に臨む作家〈下〉
ねぇ、泣かないで、胸を張って、笑って、見つめて、考えて、立ち上がって、一人で歩いて。
「琴吹さんのこと、壊しちゃうかもしれませんよ」 流人の言葉に恐れを抱きつつも、自らを救ってくれたななせを守ろうと誓う心葉。しかし、心葉の内にひっかかる、遠子先輩への思い。流人が懸命に救おうとする彼女の、これまで知らなかった過去を知り、真実を知り、そして心葉は天野遠子という少女の物語の核心へ至る。
エピローグを読み終え、しばらく時間をおいてから、ようやくいろいろ考えることができるようになりましたが、これまでに心葉と遠子先輩がともに過ごしてきた時間があったからこそ、至ることができた結末、そして微妙にへたれていた、優柔不断ぽかった心葉が選んだ道の先にある未来、そういったことが語られた最終巻に、大きな感動を覚えています。
前巻の引きで凶悪化した流人の行動は、過激化するかと思いきや、そのお株を奪う最凶のヤンデレキャラ・竹田さんの復活により、一気にパワーダウン。というか、彼が変に奔走したせいで物語がこじれた面もあるけれど、まさに身を張って遠子先輩の問題の解決に貢献してくれたわけで、結果オーライ……なのかなあ。まぁ、エピローグでの彼も、それなりに幸せを得られているように描かれているのは、本当に良かったと思いますが。
心葉をひたすらに想い続けてきた琴吹さんが、こういう扱いになってしまったというのは結構辛いものがありますね。心葉のへたれさのせいで美羽に続いて傷つけられてしまったというか、けれど、今回は心葉も自覚的に彼女を傷つけ、そして琴吹さんもそれを受け入れる強さを見せたりと、終わってしまってからも描かれる、彼女の魅力というのは決して褪せるものではないと思いましたね。
そして、これまで心葉を導いてきた遠子先輩の、彼女自身の物語。これまで、彼女が“文学少女”として語ってきた、シリーズのすべてのエピソードがあったからこそ、心葉は遠子先輩の物語を読み解き、ひとつの答えを想像し、提示することができたのだと思います。ここで彼が語る物語は、井上ミウとして描いてきた優しさと、心葉として得た強さを支えにして、遠子先輩たちに救いをもたらすことができたんでしょうか。止まっていた関係が、ようやく雪解けを迎えた様を見れば、心葉の頑張りは無駄でなかったと思えますね。
そして至るエピローグ。遠子先輩の卒業と心葉の歩みだし。これまでともに同じ道を同じ歩調で歩いてきたふたりが、明確に道を別ち、その先に向かえる未来。あぁ、もう、こんなラストシーン見せられたら何も言うことなくなりますよ。『月花を孕く水妖』で語られた未来のシーンを上手いこと裏切ってくれたというか、こういう結末が見たかったというそのものずばりを描いてくれたというか、とにかく最後の2ページは胸が詰まる思いでしたね。すべての過去の上に成り立つ未来を得た心葉たちに祝福を。
とにもかくにも、全編通して素晴らしい物語でした。完結記念に、最初から読み直してみるのも良いかもしれません。今後の短編集などにも激しく期待しています。
hReview by ゆーいち , 2008/08/31
- “文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫 の 2-6-8)
- 竹岡 美穂
- エンターブレイン 2008-08-30
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“文学少女”と神に臨む作家 上
忘れないでください。自分が遠子姉の作家だってこと
二月に入り、遠子先輩の卒業は刻一刻と近づいてきている。心葉はななせと付き合い始め、けれど、ふとしたときに心葉の脳裏には遠子先輩の顔が浮かび、そのたびに胸を刺すような痛みを覚える。別れを思わせる言葉を発する遠子先輩。心葉とななせの仲を裂くために行動するという流人。心葉と不思議な文学少女との物語の最終章が始まる。
ついにやって来てしまったラストエピソード。物語は遠子先輩の確信へと迫り、彼女自身の出自や境遇が少しずつ明かされてきています。いつも笑顔を絶やさずに、心葉を元気づけるかのように振る舞っていた彼女の触れることのできなかった部分に、心葉はついに手を伸ばしていきます。それは、心葉自身が心から望んだことではなく、流人の遠子先輩を想うがあまりの暴走とも取れるような独断の結果ではありますが。
ななせとの日常は心葉にとってどういう意味を持っているのか。ようやくひとなみに恋愛をしようと思えるようになった心葉と、彼を必死につなぎ止めようとしたり、心葉の言動にいちいち嬉しがったり恥ずかしがったりするななせの姿があまりに距離が離れているように思えて、ふたりの結末がどうなるのかというと、明るいシーンが想像できないんですが。これまで、いじらしく心葉を想い続けていた彼女なだけに、心葉は過去にも、流人にも、そして遠子先輩との関係にも、しっかりとけじめを、あるいは決別を果たさなければならないと思いますが、彼の決意をあざ笑うかのような流人の行動は、一途を超えて狂気の域に踏み込んでいるのが恐ろしいですね。
遠子先輩の両親の過去。彼女の母の手紙と親友の手紙に綴られている両者の思いの温度差に慄然とさせられます。未だ明かされない真実が、些細な気持ちのすれ違いから生まれた悲劇なのか、あるいはどろどろとした感情ゆえに生まれてしまった愛憎劇なのか、あるいは……。
幸せな結末というのがなかなかに想像できない展開で続いてしまいましたが。憂いに満たされたままの遠子先輩がこの物語の結末に笑顔でいられることを願いたいですね。
hReview by ゆーいち , 2008/05/03
- “文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫 の 2-6-7)
- 野村 美月 竹岡 美穂
- エンターブレイン 2008-04-28
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“文学少女”と月花を孕く水妖
遠子先輩と過ごした夏の日 それは特別で忘れられない思い出のひとかけら
第2巻と第3巻の間に起きた、夏休みの物語。そして、そこで心葉と遠子先輩の間に芽生えた何かは、確実にふたりの未来に影響を与えていて。
相も変わらず、透明感の溢れた文章で綴られる、もの悲しい物語。表層をなぞるだけ、そしてきっと人づてに顛末を聞いただけなら、非道く救われないと感じてしまう、それだけの物語。それを“文学少女”たる遠子先輩の想像を通し、新たな光を当てることで浮かび上がる別の真実。あくまで想像に過ぎず、けれど、きっとそうであったろうと思うに足るだけの、幸福な物語。
そして、遠子先輩の核心ともいうべき何かに、確実に近付いているという確信。作中、エピローグで未来の視点から語られた、この日々の回想は、懐かしくて暖かくて無二のもので、そしてもはやどうしようもなく取り戻すことのできない失われてしまった何かをひたすらにかき抱くかのような錯覚すらします。
着実に訪れる遠子先輩の卒業の日。前巻と今巻で遠子先輩という存在への疑問が一層深まってしまいましたが。その旅立ちと別れの日を前に、彼らに訪れるであろう最後の物語は優しいものか、悲しいものか。あるいは、その両方なのか。
hReview by ゆーいち , 2007/12/28
- “文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)
- 野村 美月 竹岡 美穂
- エンターブレイン 2007-12-25
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