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“文学少女”と恋する挿話集 1
ねぇ、心葉くん。心葉くんも先輩に、『愛しき言』を、尽くしてねっ。わたしを、心葉くんのお話で、おなかいっぱいにしてちょうだい。
ファミ通文庫公式サイト FBOnline に掲載された「“文学少女”の今日のおやつ」などに加え、書き下ろしも収録した短編集。“文学少女”シリーズのこれまでとこれから、そんなどこかに挿話される、天野遠子と彼女を取り巻くひとびとの物語。
本編が巻が進むにつれて重々しい雰囲気になっていったのに比べれば、明るい感じがして新鮮な印象を受けた短編集。
コミカルな描写が多くてくすりとさせられたり、けれど、やっぱり遠子先輩の作品への愛は変わっていなかったりと、本質は一緒だけれど、彼女の周囲のひとたちに焦点を当てると、また違った世界が見えてきますね。
特に、美羽や麻貴のエピソードについては、本編が遠子先輩と心葉の物語へ収束していったおかげで、見てみたかった部分ではありましたしね。心葉への囚われを断ち切って、自分の足でようやく歩き始めることができた美羽や、遠子先輩と出会った頃の麻貴の姿、そして関係があったのは分かりつつも、あっさりと流されていた感じの流人の内面など、今読んでみるとなるほど、なお話が書き下ろされているのが良いですねー。これは、本編を読み終わった後だからこそ、抱ける感覚かもしれません。
そして、本編の結末とエピローグの間に入る、心葉と別れた後の遠子先輩のお話が切ないですね。『スノーグース』の文章に想いを重ねて、ひとり涙を流す彼女の姿にこちらまで苦しくなるかのよう。こんな離ればなれの時間があったからこそ、あの再会をふたりがどれだけ待ち望んでいたのか、分かろうというものですね。
今回語られなかったキャラのお話は、次に収録されるとのことなので、そちらも楽しみですね。
hReview by ゆーいち , 2008/12/31
- “文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫 の 2-7-1)
- 竹岡 美穂
- エンターブレイン 2008-12-26
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円環少女〈9〉公館陥落
せんせは、失敗したって死んでないんだから、まだ本当に負けてはいないの。あたしだってそうだもの、まだ負けてないわ。
仁の師でもある専任係官・鬼火こと東郷永光が反旗を翻した。京香を斬り、《公館》に火を放ち、そして地下にある『門』を目指し進み行く。神聖騎士団の上陸、途絶した《協会》との連絡、この混迷極まる状況の中、傷ついたままの京香は、今や《公館》を離れたはずの仁を呼び戻し、命令する。師を、東郷を、撃て……、と。
相も変わらずすさまじい物語でした。地獄と呼ばれる地球で、魔法使いたちが地に這いつくばり、あるいは、それでも理想を捨てずに生きている世界。そして、彼らに悪鬼と蔑まれるがゆえに、彼らと対立せざるを得ない人間たちの物語。
今回は、前巻から引き続き、神聖騎士団の大規模な日本上陸をもって始まった戦争が新たな局面を迎えます。《公館》と《協会》の蜜月の終わり、京香によって導かれる新たな在り方の《公館》から切り捨てられようとするひとたちの、最後の戦い、そして、戦いから遠のくような生き方をしようとしても、それさえも叶えられず、自身の本質にようやく気付く仁と、刻印魔導師としての戦い抜いた先を見据え続けるメイゼル、と皆の生き方がぶつかり合っていますね。
いやもう、とにかくこれから生きていく人間も、ここで人生を終わらせる人間も、その生き様がこれでもかと描かれているのがすごい。東郷先生の生き方は、ぶれまくりな仁とは違って、最初から最後まで、彼自身を貫く揺るがない生き方だったし、逆にその弟子である仁は、今回、ようやく自分が何を求めているかの本質を知り、そこから目を背けないことを誓うことができたり。これだけ揺れまくりな主人公の周りにいるのが、皆が皆、自分を貫くための強さを持っていて、曲げられないから生まれる対立や戦いがあるわけですね。
メイゼルもメイゼルで、地獄に落とされながら、それでも自分の母親と同じように、円環世界を背負う覚悟を持って戦ってるし。ここで、ようやく、母親である憎悪の女王と、現最高位である《九位》との因縁も少しずつ語られてきて。グレンと相対したときの《九位》は、なんだか大物感があったんですが、その本質は意外なところだったですね。ラスボスとするにはちょっと格が落ちた気がしますが、それでもその実力はやっぱり桁外れで、仁やメイゼルに勝ち目があるようには思えないんですが……。
物語的には一区切り、でも、事態は全然収拾されてませんね。あとがきでも、これから本格的に動き出すって、さらにどれだけのお話が用意されているのやら。一皮むけて、けれどまだ、メイゼルに胸を張っておとなだと告げられるくらいにはおとなにはなっていない仁だけれど、彼が魔法使いたちに語って聞かせた、新しい夢を叶えるために、戦うことを決意したそのことは、これまでの仁とは違って見えましたね。
次は、神聖騎士団との対決が待ってるのかなあ?
hReview by ゆーいち , 2008/12/27
- 円環少女 (9)公館陥落 (角川スニーカー文庫)
- 長谷 敏司
- 角川グループパブリッシング 2008-11-29
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なにいろアスタリスク!
……今はまだ、原石のようなものかもしれないけど。これから磨いていったらきっと、何色かわからないけど、綺麗な宝石になるよ。チナちゃんだけにしか作れない色の、宝石。
自分に自信がなく人生の意義をやみくもに探し続ける19歳の少女・チナ。新しいことに挑戦しては辞め、挑戦しては辞めを繰り返し、長続きした試しのないチナが、現状を打破するために選んだものは「演劇」。親友の静乃の脅しにも似た忠告の後、訪れた劇団「アスタリスク」で待ち構えていたのは、厳しい練習に打ち込む実力ある先輩たちの中、たったひとりのドシロートという現実。そのまま背を向け逃げ出したくなる状況で、踏みとどまったチナをこれから待ち受けている試練とは……?
いやぁ、なんだか読んでいる方も胃が痛くなるような展開が連続して、引き込まれてしまいましたね。主人公のチナの考え方はなんだか共感できてしまうなあ。確かにきつい状況になると逃げたくなるし、けれど、自分だって何かをできるようになってみたいなんて願望を抱くことだってあります。……あれ、それじゃ、まるで私が逃げ続けてるだけじゃないですカー? ソンナコトハナイですよ?
ともあれ、夢を夢見て目標を探して、頑張ることを始める女の子のお話です。全くの未経験者が、いきなり参加した劇団はスパルタを売りにするところで、たったひとりの自主練や、劇団員らの憧れの対象となっている厳しい先輩からダメ出し、さらにはチナを疎んじる一部の団員からの嫌がらせ、と一通りの試練が用意され、さらにそれとは別の場所でも波乱が用意されていて盛り上がります。
前半はそんなチナの意気地のなさとか、うだうだと逃げる理由を探し続ける思考とか、ネガティブな部分にうわあ、とかなってしまうのですが、とあるきっかけを経て、本当に、ようやくに、自分が真剣に打ち込みたいと思えるものを見つけた後のチナのひたむきさは、こちらからも頑張れと応援したくなる輝きを放ちます。
そこに至るまでの紆余曲折は、なんだか少女小説っぽくて、あまりラノベで見ない感じの流れですが、主人公が女の子なだけに、彼女が悩んでいる事柄が割と違和感なく受け入れられたのかもしれませんね。
そうやって、自分が一生懸命になれることを見つけるまでのチナのお話。彼女の周辺にひそかに隠れていた問題が、上手いこと解決して、今度は彼女が劇団の中で自分を磨いていくことができるかどうかが課題となりそうな展開。次の巻の準備もできているということなので、ぜひ一迅社には続きを刊行していただきたいですね。
いやいや、こういう青春ど真ん中で、気持ちの良いお話は読んでてこちらも元気になりますね。
hReview by ゆーいち , 2008/12/06
- なにいろアスタリスク! (一迅社文庫 さ 1-1)
- 桜庭 わかな
- 一迅社 2008-11-20
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バカとテストと召喚獣〈5〉
雄二の家に泊めてもらえないかな。今夜はちょっと……帰りたくないんだ。
明久をして非常識と言わしめる姉・玲の突然のお宅訪問から始まる最大の危機! 気ままな独り暮らしを死守するために、かつてない勢いで猛勉強に励む明久の明日はどっちだ!? でも、やっぱりバカ!!
うん、なんだ、もうこれは公式設定と化したと言っても過言ではないでしょう。なんだ、このフラグの乱立っぷりは。
前巻に比べてラブ分は少なめですが、その反面バカ分が大幅に増量してますねえ。明久を巡る三角関係どころじゃない男女入り交じった恋の行方が大変気になるところですが、ここで実姉投入。お話的には玲のレギュラー化は確定ですか? 過剰愛情を明久に注ぐ姉の溺愛っぷりはすでに単なる姉弟愛を超えてますが! 今後、非血縁フラグとか立ったりしないですよね?
恋方面では一歩リードの美波ですが、今回は姫路さんも頑張ってますね。明久の趣味をクリティカルに突いてくるポニテ姿は新鮮・かわいい! そして、お泊まりイベントではお約束の一緒の布団で隠れる発動。過去のエピソードも語られたりと、明久との浅からぬ縁がまたひとつ積み上げられましたが、ホント、この関係の決着はどうなるか予想が付かないですねえ。そして、そっち方面に鈍感・無知な明久に反して、なんかすごいところまで妄想が行ってそうな姫路さん・美波の赤面姿ににやにやですよ! ああ、もう、かわいいなあ!?
召喚獣なお話は次巻以降に持ち越しっぽいですが、エピローグの意味深な会話とかあとがきによれば、次はひさびさに試召戦争絡みのお話が読めたりするのでしょうか。ラブでコメな話がしばらく続いていたので、ここでひとつ、タイトルに含まれているもう一つの語を思い出させていただきたいところ。波乱がありそうですが、まぁ、それ以上にバカな展開で吹き出すことになると思いますが。
そして、今回のオチは良い話。その直前の明久のテストの回答が予想だにしなかったもので、無防備なところに突き刺さって壮絶に笑ったんですが、それを受け手のオチが、正反対に良い話。過剰に見えて、歪んでいるように見えて、それでもまっすぐに注がれてる姉の愛に、気付けましたか? ああ、でも、やっぱり玲の発言はどこかずれてますががが(笑)
ああ、でも、今回何が面白かったって、あとがきですよ。良いのかそんなこと書いてしまって、とか思いつつ、近年まれに見る面白さのあとがきでございました。そうか、総受け、学習してしまいましたか。もう、戻れない……。
hReview by ゆーいち , 2008/11/30
- バカとテストと召喚獣5 (ファミ通文庫 い 3-1-6)
- 井上 堅二
- エンターブレイン 2008-11-29
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ダブルブリッド―Drop Blood
だから、死ぬまで生きていこう。死にたい死にたいって思いながら、生きていこう。
優樹が失われた世界。その世界で、太一朗と未知は渋谷の六課を目指し道を行く。決して分かりあうことのできない思い、許すことのできない罪、そして埋めることのできない溝を感じながら、それでも彼らは生きていく。それは片倉優樹にまつわるひとびとの「かつて」と「これから」の物語。
これを読んでも多くを語ることもないかなあ、な短編集。というか、もう、言葉が出てこないよなあ。
本編の後日談「続いた世界のある顛末」が本命ではありますが、それ以外の短編で描かれる、ひとびとの日常が、優樹が失われた後に語られることで、そのときに感じていただろう穏やかさよりも、それがもう取り返しの付かないことであるということに気づかされることの切なさが先に立って、やっぱり悲しさを覚えてしまいますね。
大田の傍観者気取りの長台詞も、虎司と安藤さんのちょっと普通からずれたお付き合いも、夏純の未成熟なひととしての感情も、そして優樹が過ごした子ども時代も、優樹の物語が幕を下ろしてから語られるなんて、ねえ。
そして、彼女がいない世界で、続いていくそれぞれの物語。優樹が最後に望んだ夢のような世界が、そこにあるわけでは当然なくて、彼女の喪失によって、皆が皆、これまでのようにはいられない。憎しみ哀しみ、あるいは気遣い、無関心を装い。決して小さくない、そんな変化を受け入れながら、これからも生きていくことを背負わされる。
それぞれの生も死も、そのひとだけのものだ、そういう大田の言葉通り、それぞれの命は、これからも続いていく、死ぬまで生きていく。その言葉の重さが、実感されるようなお話でしたね。
hReview by ゆーいち , 2008/11/29
- ダブルブリッド―Drop Blood (電撃文庫)
- 中村 恵里加
- アスキーメディアワークス 2008-11-10
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