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ナインの契約書―Public Enemy Number91
人生に必要なのは、砂糖と好奇心とわずかばかりの悪意さ。
とある街のボロビルに居を構える『九探偵事務所』。そこで探偵業を営むのは、銀髪の美少女・
やはり恐ろしいのは悪魔ではなく人間よのお……。そんな感想を抱かざるを得ない結末を取りそろえた短編集。まぁ、最後の物語だけは、ハッピーエンド? な終わり方ですが、これはこれで悪魔すらときには騙してみせる人間の恐ろしさの一端であるという見方もできますね。
そんな感じで、ドロッドロに真っ黒なお話が続いたかと思ったら、次のお話で救いを見せてみたりと、意外に読後感は悪くなかったかな。
それもこれも、あくまである九が、悪魔のくせに人間が破滅する姿を見ることに、何らかの後ろめたい感情を抱えているように思える節があるせいかも。逆に使い魔たる一はおしゃべりで、自身の言のごとく悪意でもって人間に接するという人でなし。まぁ、人間じゃないですが。魂を差し出し、望みを叶えるために契約を行おうとする人間を、ひととは違う価値観ながらも押しとどめようとしてみたりと、もしかして彼女はかつては悪魔ではなく別の何ものかであったのではないか、なんて想像を飛躍させてみたりします。
そんな印象を確固たるものにしたのが、最後の挿絵の彼女の表情なんですが、終始しかめっ面、怒ったような口調、一に対する苛烈な仕打ち、とまさに悪魔、なんてキャラ作りをしているくせに、どこか根っこの部分では人間に対して少なからぬ好意を抱いているのかなあと思ってみたり。
むしろ、彼女と契約を果たした人間たちの望みの歪み、それ自体の想像の斜め上さに背筋を寒くしたりしますね。お互いがお互いを真に理解できないからこそ起こってしまった悲惨な事件、そこに通常叶うことなどない願いが叶ったとしたら、というイフが重なることで、それは悲惨を通り越して誰も彼もが救われない悲劇へと発展していく。そこにあるのは、愛情であったり、妬みであったり、哀しみであったり、寂しさであったり、過ぎた愛情が裏返ってしまった憎しみであったりと、縋る藁があったならばその先に地獄が待っていても掴まざるを得ない、そんな袋小路に迷い込んだひとたちの物語だったのでしょうか。特に「僕の、テディ・ブルー」は一見の価値ありかな。ヤンデレ的な意味で。
こういうダークな雰囲気の作品の中でもなかなか良い出来だったかな。イラストレーター繋がりで「麗しのシャーロットに捧ぐ―ヴァーテックテイルズ」辺りが好きだったひとは楽しめる可能性が高いかもしれません。あそこまで、怖くはないけれど。
hReview by ゆーいち , 2008/12/14
- ナインの契約書―Public Enemy Number91 (MF文庫J)
- 二階堂 紘嗣
- メディアファクトリー 2008-11
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麗しのシャーロットに捧ぐ―ヴァーテックテイルズ
いや、これはスゴいですね。富士見ミステリー文庫から出ること自体がスゴい。そして、中身の完成度も非常に高い。ミステリ調のホラーで、構成が意図的に複雑にしてあるせいか、序盤~中盤で主な登場人物が揃うあたりで、時系列と人物関係が混乱の極みに(^^; そして、それを一気に覆す終盤の展開がゾクゾクしますね。小さな違和感を覚えつつ読み進めていって、その正体に気付かされる瞬間の驚きはラノベではなかなか味わえないなぁと。
作者氏はこの作品がデビュー作のようですが、実力的には十分だろうなぁ。この路線で行くには萌え全盛の業界ではセールス的に厳しい部分はあるかも知れないけれど、それはそれ、富士ミスというある意味好き勝手できるレーベルで、好きなようにこの手の作品を描いてくれても良いかも。
イラストは『半月』の山本ケイジ氏。途中までどっかで見たことある絵だなぁと思いつつ気付かなかった私の目はきっと節穴。中身を確認しないで絵買いをした人は、さぞかしこの容赦ないダークな展開に打ちのめされたことでしょう。
私? 私はとりあえず目に付いた新シリーズやら新人作とかは何も考えずに買うので(笑) こういうストーリーはかなり好きですし、非常に楽しめました。
- ライトノベル | 富士見ミステリー文庫 | 尾関 修一 | 山本 ケイジ | 読書感想
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半月―山本ケイジ画集
- 2006-12-30 (土)
- ライトノベル
『半月』関係の未見のイラストもカラーで収録されていて大変よろしいのに、さらに橋本紡の掌編「花冠」がもう素晴らしい。短編集で終わったかと思ってたお話の続きが見られたことがなんとも嬉しいじゃないですか。描き下ろしのイラスト数点も『半月』の雰囲気を良く残していて、いや、もう、うわぁ……。
価格的には結構お高い一冊ですが、良かった良かった。
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半分の月がのぼる空〈8〉
これにてシリーズ完結の短編集。7巻から引き続きの「雨」の展開が幸せすぎて目眩がする。切り取られた日常の一部であっても、そこで交わされた心も、会話も、笑顔も、全てが輝いてます。青春万歳。
実際のところ、興が乗ってこのボリュームになったんだったら、7巻を「雨」以外の短編集にして、8巻をこのエピソードできれいに締めてほしかったかな。
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半分の月がのぼる空〈7〉
番外編ということで、本編から切り取られたほんの少しの時間を描いた短編集。
いや、ホントこういう作品がラノベで出てくるのが面白いというか。事件らしい事件なんてなくて、登場人物の日常と、彼らが経験した過去と現在を淡々とつづるだけで、一本のストーリーになって、面白いんだから。
文化祭のエピソード『雨 fandango』が前後編なのはアレですが、他の短編も心に染みるというか、感傷を誘われるというか、ちょっといい話で静かな余韻に浸ることができる良作かと。猫缶の話がああいう展開を見せるとはねー。
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