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お姫さまにはかなわない
お姫さまにはかなわない 気が付けば日付が変わっていた。 「う~……眠れないよう」 つぶやいても、その声は冷たい空気をわずかに震わせ、夜闇に吸い込まれるだけだった。 ふと修学旅行の前日も、こんな風に期待と、興奮と、それからほんの少しの緊張と不... -
春を待つ桜のように
春を待つ桜のように 少しだけ早起きして、少しだけ早く家を出る。 河野貴明の今朝は、その一点を除いてはまったく代わり映えのしない一日の始まりのはずだった。 「おはよう、タカくん」 お隣りの柚原さんちの長女・このみが、自宅前で貴明を待っている... -
“「メリークリスマス」が言えなくて”
“「メリークリスマス」が言えなくて” はぁ。 もう、何度目か分からないため息が漏れる。 「こら、何ぼーっとしてるんだ?」 「そーだぜ、先生ぇ。ぼーっとしてんじゃねーよー」 「あ、ああ、ゴメンね」 っと、そうだ。 あたしは彼――花井春樹の差し出した... -
“「大丈夫だよ」と彼女は言った”
“「大丈夫だよ」と彼女は言った” 「でさ、あたしは別にそういうこと期待してたわけじゃなかったんだけどさ」 「……」 「うそ、ホントはちょっとだけ期待してたかも。あたしだってあの人に子ども扱いされたくなかったから、慣れ ない化粧だってしたよ。ま、... -
きっと明日も
きっと明日も 明日もいい天気だな。沈む夕陽の光に染められた茜色の雲を眺めながら俺はグラスを傾けた。 「よっ、耕一、なに黄昏てんのさ」 「ばーか、たまには物思いにふけるってのもカッコいいだろ?」 「あんたにゃ似合わないよ」 隣いい、そう訊いて... -
『春──未来予想図』
MR=13さんより寄稿いただいた、ToHeart SSです。 『春──未来予想図』 暦は三月── 。 空はどこまでも晴れ渡ってる、穏やかな小春日和。 そんな中、オレは──。 「せーのッ……とぉッ!!」 自分の家のリビングで、ソファーと格闘していた。 やっとの思いでソフ... -
『あなたの素顔』
MR=13さんから寄稿いただいた、ONE~輝く季節へ~ SSです。 『あなたの素顔』 ──卒業式の夜。オレはみさき先輩と結ばれた。 オレと先輩、二人だけの教室で。 ──月明かりが照らされている静かな教室、 オレは、二人の衣擦れの音と呼吸とがやけに... -
~はじまりはきみのうた~
~はじまりはきみのうた~ 桜が芽吹き始める季節。 降り注ぐ陽射しは今年になって一番の暖かさを。 初春の風はわたしの髪をゆるやかになびかせて吹き抜けていきました。 物心付いてから十数度目の春がもう少しでやって来ようとしていました。 わたしはこの... -
moonlight surrender
『愛してるの』 ONE-for Bright Season- Short Story -moonlight surrender- 「――なぁ、澪」 夜の帳が生む静寂。 星の瞬きだけが空を輝かせる夜明までまだ遠い時間。 ひとり呟いた言葉に返事を期待していたわけじゃない。 聞こえるのは小さな、規則正しい... -
すきなひと
Kenkunさんより寄稿いただいた、まじかる☆アンティーク SSです。 すきなひと 「ねぇ、今、何してる?」 「骨董品の整理~。スフィーが居なくなってから、大変だから」 「今までスフィーちゃんに頼りっきりだったもんね」 「まぁな」 「……ね」 「ん?」 ...