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かくてアダムの死を禁ず

stars 主人公のシスコン具合にドン引き アコニットはいいツンデレ

修道院を訪れた主人公・誓護と妹の祈祝が巻き込まれた一夜の怪奇譚。超常の存在、教誨師・アコニットの代理として、過去に起きた殺人事件の犯人を捜し出すことができなければ、誓護が地獄へ堕とされる。いのりを守るためにも、なんとしても真実に辿り着かなければならない……という感じでなかなかミステリ風の物語。

富士見ミステリー文庫なのにラブ分が薄めなのも意外。いや、誓護の祈祝への過剰なまでの愛情の注ぎ方だったり、登場する女性陣、修道女の真白だったり、誓護の叔父・鏡哉の秘書・姫沙だったり、あるいは誓護の継母だったりの歪んだり、道を誤ったりした愛憎はそれはもうずびっしりとありますが。

過去を視たり、空間を隔絶したり、雷を操ったりと教誨師の能力がなんでもありなわりに、誓護を使わざるを得なかったアコニットの理由が、作中で語られた断片的な情報だけではちょいと弱いかなと思いますが、二転三転する真相への道行きなどはなかなか面白いですね。舞台に集った誰もが抱えている罪の、どれもが裁かれるべきでありながら、裁くものがいないという状況も、皮肉が効いてるかと。
ただ、時系列がバラバラになってるのはミスリードを誘うためとはいえ、ややこしい構成。わざわざエピソード番号振ったりしてますけど、この構成が奏功してるかどうかは微妙かなあ。

キャラクター的には、女性陣にシスコン具合をひたすら罵倒される誓護が面白いですね。自覚ありながら、祈祝以外の女性に興味示さないなんてのは、それこそ真性(笑) 真白の毒舌が外見とのギャップが激しくて悶えたり、と序盤の会話シーンなどは非常に楽しいです。中盤以降はどんどん重苦しくなっていって、そんなものを楽しむ場合じゃなくなりますが。

アコニットは、彼女自身が人間を信じないという態度を固持しつつも、誓護のおよそ常人とはかけ離れた思考と他者への想いに触れて、少しずつ考えを変えていくあたりの描写は良い感じですね。最後の、もう一人の教誨師・鈴蘭への啖呵については、急激な心変わりとも思えますが、誓護との別れのシーンだったりは、素直に美しいなと思えますね。

シリーズ化が念頭にあるのか、設定が十分に明かされてないのが消化不良感の原因だとは思いますが、その辺が語られる第2巻は出るのかどうか? やけにコンピュータ用語が使われていたり、誓護らの現し世をネットゲームに例えていたりと、そもそも作品世界が仮想世界何じゃないかという野暮なツッコミを幻想してしまいました。

ちなみに、花言葉事典によれば、アネモネの花言葉は「はかない恋」「恋の苦しみ」「薄れゆく希望」「清純無垢」「無邪気」「辛抱」「待望」「期待」「可能性」、特に赤いアネモネは「君を愛す」だそうで。意味深ですが、作中で語られたアコニットの過去、裏切りへや過去を視る事への恐れの原因についても大方の予想通りって感じですかね。
ついでに、鈴蘭は「幸福が帰る」「幸福の再来」「意識しない美しさ」「純粋」だとか。
なるほどねぇ……。

hReview by ゆーいち , 2007/06/03

かくてアダムの死を禁ず
かくてアダムの死を禁ず
海冬 レイジ
富士見書房 2007-03
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