オイレンシュピーゲル 弐 FRAGILE!!/壊れもの注意!!

2008年6月26日

stars 甚大な犠牲を防ぐため、それより遥かに小規模な犠牲をためらえる幸福など、もはや誰にも残されてはいない。

ミリオポリスにロシアの原子炉衛星〈アンタレス〉が墜落した。その事故の裏で暗躍する7つのテログループ。墜落現場から奪われた部品を使い、この街で引き起こされようとしている最悪の陰謀に対し、〈猋〉小隊は三手に別れ事件を追いかけて行く。

うおおおお。熱い! そして、それ以上に容赦がない!!

2巻目にして、こんな大事件が引き起こされるとは、この先どんな展開が待っているのやら……。

衛生の落下事故を契機に、動き出すテログループたち。主義主張の異なるそれらが、ただ一つのものをリレーし、ミリオポリスにもたらそうとする災厄は最悪のもので。それを回避するために、それぞれが別任務に就く涼月たち。互いを互いでフォローしあう理想的なチームが別行動を取ったとき、彼女たちに突きつけられるのは、あまりに過酷な現実と、無力感ばかり。

大人たちの論理と力は、例え特甲を持った少女たちといえど簡単に覆せるものでもなく、まさに百戦錬磨の大人たちがくぐり抜けていく修羅場の中で、涼月が、陽炎が、夕霧が晒されるのは、容赦のない残酷さ。

どの局面でも、力はあるけれど心はまだまだ未完成な彼女たちが、傷ついていく様が描かれているし、戦いの描写自体も生々しいのでなおさらにきついですね。今回も容赦なく、戦端が開かれれば人間は当たり前のように死ぬし、1秒前まで言葉を交わしていた味方が、あっさりと退場する過酷さ、あるいは、戦場という世界の当たり前さの描かれ方には妥協がないわけで。

特に涼月が組み込まれたユーリー中佐率いるロシアのチームのエピソードは、その顛末があまりにやるせなくてショックも大きいですね。いやはや、ホントにすごい話。

『スプライトシュピーゲル』とのリンクがはっきりとしていて、あちらの登場人物がこちらに顔を出していたりで、あちらのストーリーがどうなっているのかも楽しみになりましたね。早速読みたいところです。

そして、こんな厳しい世界の中でも、なんだか乙女パワーを発揮している陽炎に癒されますね。何この夢見る女の子。可愛いじゃないか。

hReview by ゆーいち , 2008/06/26