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狼と香辛料〈9〉 対立の町・下
ぬしは口だけの雄ではありんせん、とわっちに言わせてくりゃれ?
『狼の骨』の情報を求め訪れたケルーベの町はにわかに騒がしくなった。陸揚げされた伝説の海獣・イッカクは、南北の対立の構図を大きく書き換えるだけの価値を秘めているためだ。その利益を独占しようと目論むエーブに商会を裏切るという提案を受けるロレンス。そして商会の幹部・キーマンはそんなロレンスをエーブとの交渉の仲介人として利用するために協力を要請してきて……。
大きな商戦に初めて臨むロレンス。その場を仕切る格上の商人たちにとっては、ロレンスも駒の一つでしかなくて。そんなことを自覚し、荷が重いと尻尾を巻いて逃げ出そうとするロレンスの、尻を蹴るのはやっぱりホロ。辛辣に、挑発的に、馬鹿にするようにロレンスをけしかけるけど、それはホロなりのロレンスへの期待の表れの裏返しだったりと。相変わらず、本音を言葉にしないで、言葉の裏に気持ちを潜ませ大人の会話をするけど、その様がどんどん円熟した感じなっていってるのは、もはや気持ちの中では完全に夫婦だよなあ、と。
様々な商人たちが、利益を得るためにしのぎを削る巨大な戦場。キーマンとエーブという、ロレンスにとっては敵うべくもない商才のふたりに対し、ロレンスなりの意地でもって一矢報いようとしたところで、キーマンらの目論見を覆す展開が待っていて、というのは、久方ぶりに熱い展開ですね。真意を悟らせないのが商人のスキルならば、それを誰よりも発揮したレイノルズは、負け組臭漂わせていたあの姿さえ、すべてを欺くためだった? いやはや、誰も彼も一筋縄では行きませんな。そんなレイノルズのトリックを明かし、一気に逆転に持っていった終盤の流れは燃える燃える。久方ぶりに商人としてのロレンスの活躍が見られたかも。
そして、エピローグのシーンは、なんともにやけてしまう美味しいシーンですね。エーブの行動に対して取ったロレンスのささやかな抵抗。それが誰に対してか、なんてのは言うまでもないけど、その後の語りたくもないというホロとのやりとりは、想像するだけでにやにやしてしまいますねえ。間に挟まれたコルには、まだ早い大人の修羅場が展開されたのか、それとも、甘い甘い言葉でご機嫌と取ったのか、どっちに行ってもロレンスはご愁傷さまといたところでしょうか。
さて、ようやく次の舞台が見えてきましたが、今度は海を渡る? まだまだロレンスたちの旅路は続くようですね。
hReview by ゆーいち , 2008/09/07
- 狼と香辛料 9 (9) (電撃文庫 は 8-9)
- 支倉 凍砂
- アスキー・メディアワークス 2008-09-10
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狼と香辛料〈8〉
だが、大物では通れない小さな道が世の中にはたくさんある
『狼の足の骨』の噂を追い、港町・ケルーベへとエーブを先回りしたロレンスたち。エーブから紹介を受け、とある商会で仕入れた情報から、『骨』の情報の信憑性に確信を深めるロレンス。しかし、ケルーベは三角州を挟んだ南北で対立し続ける訳ありの町で、今まさにその対立の緊張感は頂点に達しようとしていて……。
上下巻の上巻です。なんだかすごいところで続いています。
旅の連れにコルを加え、ロレンスとホロのやりとりに、純粋な少年が加わることで、ふたりの会話の大人さ加減が引き立てられているような雰囲気。逆に、ここ数巻のような、ふたりの甘甘ないちゃつきより、久方ぶりに大きな商売の兆候を巡っての駆け引きが行われているのが、むしろ楽しく思いますが。
仇敵ともいえるエーブとロレンスの駆け引きもそうですが、さらにロレンスの後ろ盾ともいえるローエン商業組合の遣り手・キーマンの静かな圧力もまた緊張感に拍車をかけますね。
エーブとキーマン、対立する町の構造の縮図かのようなふたりの、表には決して出てこない策謀の手駒として数えられてしまったロレンスは進退窮まったかのような状況に陥ってしまいます。裏切りを是とするエーブと、裏切りには徹底した制裁を辞さない商業組合の中で辣腕を振るうキーマン。どちらも、今のロレンスからは一枚も二枚も上手のような存在。
『骨』を巡る情報収集のつもりが、なんだかより大きな陰謀を構成する小さな歯車としてはめ込まれてしまったロレンス。ここから、望む結果を引き出せるのかどうか。気圧されてばかりで後手後手のロレンスですが、次巻は活躍(?)するようですし、この遣り手どもに一泡吹かせるような展開を期待したいですね。
hReview by ゆーいち , 2008/05/18
- 狼と香辛料 8 (8) (電撃文庫 は 8-8)
- 支倉 凍砂
- アスキー・メディアワークス 2008-05-10
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狼と香辛料〈7〉 Side Colors
過去のホロの旅のエピソードも含んだ短編集 ホロの内面を描いた書き下ろし短編は転がりそう
リュビンハイゲンでの騒動が丸く収まったことを祝し、ホロとロレンスはノーラと食事をしていた。しかし、体調を崩したホロは、不覚にも宴会の最中に倒れてしまう。ノーラの登場に心穏やかならざるホロの内面を描いた書き下ろし短編「狼と琥珀色の憂鬱」をはじめ、ロレンスと出会う以前のホロの旅を描いた「少年と少女と白い花」や、港町パッツィオでの二人の買い物風景「林檎の赤、空の青」などを収録した短編集。
本編の進行を一休みして、短編集の登場。これは、今放映しているアニメ絡みの戦略的な展開なのかな? 特に最後に収録された「狼と琥珀色の憂鬱」なんてのは、アニメ未放映エピソードとしてDVDにも収録されそうな雰囲気の良作。確かにこれは動画で見てみたい。
ということで、ロレンスと旅をする前のホロが描かれた「少年と少女と白い花」では、今のホロとはまた違った側面が見られてほくほく。ロレンスとは大人の会話をしているけれど、子ども相手にはからかってみせたりと、はしゃぎ気味な様子に見えました。こんな出会いがあったからこそ、ロレンスに対する態度とかが規定されてきたんですかね。こういう、時代時代における、ホロとひとびとの関わり合いのエピソードも、今後許されるなら見てみたいと思います。この時代のお話自体もまだまだ広げられそうですしね。あ、でも、外伝の進行を頑張って本編が進まなくなるのも考え物かなあ。
そして、本命というか、最大の見所な「狼と琥珀色の憂鬱」は、なというか、ホロの外部から見たときの超然とした様子とはうって変わった乙女チックな想いににやけるやら転がりそうになるやら。何これ、この時点で、思いっきりロレンスにベタ惚れじゃないですかー。なんというハッピーエンドフラグ。ここまで来たら、ホロの故郷に着いたら挙式上げちゃいなよ、あなたたち。嫉妬に身を焦がすホロも新鮮ですが、何よりも、このラブい空気が甘くて甘くて、何も食べてないのにごちそうさまですよ。
……しかし、こうまで相思相愛になってしまうと、DS版のゲームの位置づけがやたらと微妙になってくるなあ。やっぱり、原作読んできてると、ホロとロレンスのハッピーエンドを期待してしまうので。
hReview by ゆーいち , 2008/02/22
- 狼と香辛料 (7) (電撃文庫 (1553))
- 支倉 凍砂
- メディアワークス 2008-02-07
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狼と香辛料〈6〉
ホロとロレンス ふたりの睦言の応酬に身もだえる
毛皮でのもうけ話で共同戦線を張ったエーブに出し抜かれ、はらわた煮えくりかえるホロ。ロレンスに対する怒りはそれだけではないけれど、それを素直に言い合えるはずもなく、旅の終わりを先延ばしにするためにも、水路でエーブを追いかけることに。
商売の話と少し離れた第6巻。ホロとロレンスの仲はどんどん深くなっていって、なし崩し的に告白までいってしまいましたね。上手いことはぐらかしはぐらかせ、でも、その嬉しさは隠しようもない感じ。言葉遊びを重ね、直接的でないかたちでお互いの気持ちを確かめ合うふたりの会話は見ていて気持ちいいですね。
今回、コルという少年がふたりの旅に新たに加わり、少しだけにぎやかに、けれどこれまでのようにふたりっきりならではの甘い会話はできなくなっていくのかな、と。ホロのいう予行演習の意味は直球で、なんとも恥ずかしい台詞ですが、これまで別れを恐れ、ただその訪れを先延ばしにするだけだったことからすると、ずいぶんと前向きな言葉になってますね。
一つの旅の終わりは、新しい旅の始まりであるというシンプルな答えにようやく至り、彼らの旅路はまだまだ続くってことですね。
hReview by ゆーいち , 2007/12/30
- 狼と香辛料 6 (6) (電撃文庫 は 8-6)
- 支倉 凍砂
- メディアワークス 2007-12-10
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狼と香辛料〈5〉
ロレンスとホロ 旅の終着を目前に変わりゆく関係
ホロの故郷の情報収集を続けるロレンスは、北の港町・レノスを訪れる。なにやら商売の気配が漂う町の様子と、そこで出会った商人・エーブから持ちかけられた美味しすぎる商売の誘いに、商人の血が騒ぐのを押さえられないロレンスは……。
商売の話がこれまでのストーリーのように大きなウェイトを占めておらず、むしろロレンスとホロのいちゃつきぶりがこれでもかと発揮された第5巻。
言葉にせずとも通じ合うふたりの姿は長年連れ添った夫婦のようで、けれど、その以心伝心な蜜月が永遠でないことを知っているホロは、それゆえにふたりの関係に区切りを付けることを望んで。
そんな苦悩とかが軽妙な会話の裏に見え隠れしていて、睦まじい様子を見せつけられながらもどこか不安な雰囲気も感じていたり。
そして、それもすべて理解した上で、ロレンスがホロに告げた言葉と、とった行動。ロレンス自身もこれまでの旅路の中で、どれだけホロの存在が大きくなってきたかをこれでもかと感じていたんですかね。ラストシーンは揺るがぬ二人の関係を確信させそうな美しいシーンでしたね。
さて、そろそろ目的地・ヨイツが目前に迫ってきました。そこで真実を得たとき、またどのように関係が変わっていくのか、一つの旅の終わりはまた新たな旅の始まりになるのか。どういう結末になるのですかね。
hReview by ゆーいち , 2007/08/27
- 狼と香辛料 5 (5) (電撃文庫 は 8-5)
- 支倉 凍砂
- メディアワークス 2007-08
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